よくポルノを評して「男の勝手な欲望を」うんぬんかんぬんってやる。女性が男を批判する時にも使うし、男性が自己批判する時にも使う。
　そういう紋切り型の表現を見るたびに、ハーレクインだって女の勝手な欲望だし、だいたいボーイズなんて典型的に女の勝手な妄想そのものではないか、と言いたくなる。
　それにだ。勝手な欲望というけど、勝手でない欲望なんてあるのだろうか。欲望なんて、勝手に決まっているのだ。身勝手でないものは欲望とは言わんのである。

　エディターの魂百まで。
　勿論、三つ子の魂百まで、のパロディである。たいていの場合、エロゲーのシナリオ書きは、最初に手にしたエディターと生涯をともにする。途中で変更したという話はあまり聞かない。
　鏡の場合、最初に出会ったエディターがMIFESだった。イリュージョンに就職して最初にあてがわれたDOSマシーンに入っていたのが、DOS版のMIFESだったのだ。
　以来、10年間MIFESを使いつづけている。他のエディターに浮気したのは、『パンドラの夢』を書いていた初期の頃だけだ。
　『パンドラの夢』というゲームのメッセージウィンドウは、縦書き表示になっていた。そこで縦書きの感覚を掴むために、縦書き表示のできるWZ Editorを一時期利用したのだ。だが、感覚が掴めるとMIFESに戻った。
　世間では秀丸がよく使われているようだが、鏡は秀丸が好きではない。MIFESの方が一気に同時置換できる数もグローバル置換できる数も最大５個と優れている、と思ってしまう。いや、単純に肌が合わないのだ。
　だが、知人のシナリオライターは秀丸を使っている。こればっかりは相性というより、最初にどのエディターに触れてしまったか、という運命にあるようだ。
　ちなみに小説の方は、OASYSというワープロソフトを使っている。鏡は親指シフターである。他のキーボードはたるくて叩く気になれない。
　OASYSなのは、最初に買ったワープロが富士通の親指シフトだったからだ。一太郎も使ってみたことがあるが、いちから印刷の細かな仕様を覚えるのが嫌で、瞬間的にOASYSに戻ってしまった。Windowsが会社に導入される前に転職してしまったので、WordもExcelも使えない。だから、今から一般会社に就職しても、鏡は使い物にならないのである。

　ペダンティックという言葉がある。
　いかにも人を煙に巻くような形容詞を知ったのは、高校２年の時。Ｚ会という通信添削の機関紙だった。そこでＺ会経験者のインタビューがあって、その中にこの聞き慣れない未知の一語が載っていたのだ。
　pedantic。
　衒学的な、という英語である。漢字で書いても普通には読めないところがまたまたゲンガク的で気障である。
　ペダンティックとは、学問や教養をひけらかす様を云う。また、そういう行為をペダントリー、そういう人をペダントと云うそうだが、あまり見かけない。
　ペダンティックは、エロゲー業界と切っても切れない。ストーリーとはまったく無関係に一方的に書き手の知識がひけらかされるということが、横行している。こればかりは無問題とはいかない。かく言う自分も、『Love Split』ではずいぶんとボウリングのことについて詳しく書いたが、あれはボウリング部の話だったからである。ボウリングのことを何も知らないのでは、お話が愉しめない。だから、愉しめる程度に抑えて書いてある。もし主人公が帰宅部というただの学園ものだった場合、同じことをやるとペダンティックになる。『あめいろの季節』のファースト原稿には、陰と陽の組み合わせ、初爻、二爻といった実際の占術システムを含めて易占いのことが詳述されていた。プロデューサーの適正な判断で削られたが、残っていなければフラストレーションを誘発していたはずである。
　ペダンティックは嫌われる。
　エロゲーの場合、頁をめくるのではなく、指でクリックするのだからなおさらである。おまけに本のように16行や18行単位で次の頁に移ってくれればよいが、エロゲーではせいぜい3行か4行だからタチが悪い。小説１頁分を読むのにも、6回～10回はクリックしなければならない。
　正直、苦痛である。文章を読むメディアとしては、エロゲーは最悪である。画面は狭いし、何回も指を動かさにゃならんしで、面倒臭いことこの上ない。だから、一見して無駄とわかる文章を読まされるとフラストレーションがたまる。書き手が受け手のことを考えられない、レベルの低いオナニー中出し野郎だと、こういうことが頻発する。
　しかし、一方でユーザーがペダンティックを呼び寄せているという部分もある。無駄の少ない洗練された文章よりも、ある程度装飾的でインテリ趣味の漂う、知的な優越感をくすぐる文章の方が全般的に好まれる傾向があるようだ。それはエロゲーシナリオライターの典型的な肖像にも示されている。村上春樹のファンで新本格ミステリーの担い手の３人（森博嗣、京極夏彦、綾辻行人）のうち必ず誰かが好きというのが、最もパターンなシナリオライターの姿だ。村上春樹は無駄の少ない素朴な文体の使い手ではないし、森博嗣は気の利いた文章表現を好む。列記しなかったが、西尾維新も、饒舌で衒学的な言い回しを好むきらいがある。
　志賀直哉の文体がエロゲーに適しているかどうかはともかく、志賀直哉の文体から限りなく遠く離れた文体の作家を好むライターがものした文章を好むという循環のなかには、巧言令色少なし仁と言い切った孔子の感覚も簡潔を好んだ志賀直哉の感性も見えてこない。むしろ透けてくるのは、饒舌とペダンティックへのすり寄りである。知的な装飾性は、エロゲーユーザーにあっては避けられるべきことではなく、むしろ歓迎されるべきことなのだ。
　大容量化の時代を行くエロゲー世界に、その流れを止めるものは、ない。

　WEB上の日記を知的に読む、つまり何かのヒントとして読むというのは少なくて、たいていは覗き見的な愉しみとして他人の日記を消費しているのではなかろうか。だとすれば、女子更衣室に忍び込んでカーテンの隙間から女体を覗こうとした島根大学の助教授と心理的には変わらない。ただ違うのは、島根大学の助教授が覗いたのは30代の女性職員であり、それが法に触れる行為だったということぐらいで、覗かれた当人が恐らくお目当ての女子大生だったとしても変わりはない。
　ただ、自分は覗き見的な部分に価値を見出せなくて、読めるのは作家さんや絵描きさんのお仕事情報がつまった日記くらいである。ゲーセンに行ったの、そこで格闘ゲームに燃えただの、どこまでＲＰＢを進めただの、どこへ出かけただの、何を買おうか迷っているだの、そうした瑣末な個人的な行動の羅列には、まるっきり興味が持てない。そういったものがわざわざ公開される必要があることだとは思えないのだ。
　多分、20年近く万年筆で日記をつづけていたからだろう。個人的な行動を記録するなど、自分にとっては小便を垂れていた頃の行為か夏休みの宿題で出される下手糞な絵日記にすぎないのである。
　WEB上の日記も4年近くつづけていたけれど、ある時、突然気持ち悪くなってやめてしまった。女の子の部屋にカメラを設置しておいて、その子の生態を24時間眺められるというアダルトなサイトがあるけれど、それに似た、自分の生活を覗かれる不気味さ、気色悪さを感じたのだ。
　粘着質な自分は日々の起床の時間も食事の時間も仕事の時間も克明に綴っていたので、生活はほとんどシースルーだった。勿論、それが他人に読まれることは百も承知していたし、承知した上で実名を出したり出さなかったり、情報を載せたり載せなかったりを選んで読者を意識した上でのフィルタリングをしていたのだけれど、ある日突然、なぜ自分の生活に対して透明性を確保しようとするのか、理由がわからなくなった。
　日記を綴って他人に公開するというのは、自分の生活に透明性を導入するということである。でも、なぜそんなことをするのか、理由があるように思えないのだ。
　自分には、書かれたものが何かしら意味や有用性を持っていなければならないという強迫観念がある。でも、健康のためにコーヒーを飲む人はいまい。日記も同じだ。他人が他人の日記を読むのは、別に意味や情報が欲しいからではないのだ。むしろ、逆にそれらから自由になって一息つきたいから、おおよそ活字に耐ええないと思われる羅列が日記を飾り、それが人気を博すのだろう。人は日記を、煙草やコーヒー代わりに嗜んでいるだけなのかもしれない。

　『世界の中心で、愛をさけぶ』の物語的な素朴さは、敢えて問うまい。
　恋愛に陥る二人が同じクラスで同じ学級委員という都合のいい設定、二人が『ロミオとジュリエット』の主役とヒロインを演じるという棚ぼた的流れ、彼女に横恋慕する連中から襲撃を受けるというよくある事件、島で二人きりになるという少年マンガ的な赤面のイベント。オーストラリア、アボリジニ、竹取物語という通俗的な固有名詞が物語に使用されるという通俗性。
　その物語的インデックスから伝わってくるのは、文学的な小説から新奇性が消えてしまったという事実である。
　すべては知っていること。
　どこかで経験してしまったこと。
　デジャヴーというのではなく、すでに知ってしまっているという飽和。どこかで読んだこともあるし見たこともあるし別に驚きもしないという、新奇性の不在。
　それが、文学的な小説の終焉を改めて示しているように思えた。
　小説（novel）と新奇性（novelty）とは、根源的な関係がある。文学の表現形式としての小説（novel）は、中世イタリア語のnovella「新しいこと」が語源である。明治時代には、小説はニュース的なものとして読まれていたこともあるそうで、小説が新奇性の存在としてあったという証拠になっている。フローベールの『ボヴァリー夫人』のように、小説はセンセーションを巻き起こせるほどニュース性のあるものだったのだ。
　だが、エンターテインメントの発達とともに、本来小説が持っていた新奇性は失われてしまった。novelからnovetlyもnovellaもなくなったわけで、それを小説の終焉という決して新奇性のない言葉で片づけてもばちはあたるまい。それが、きっと今の文学の現状なのだろうから。

　冒頭から言うが、これは蛇足である。
　元東大総長という、特権的な知の占有者・蓮見重彦氏は、『凡庸なる芸術家の肖像』という大部の著のなかで、流行についてこんなふうに書き記している。

「流行とは、特権的な知の占有者を起点として形成される階層的な秩序である」

　『世界の中心で、愛をさけぶ』の編集者が自らものしていた文章によれば、帯に「泣きながら一気に読みました」という紫咲コウの言葉を引用することで、セールスは拡大されたそうだ。名前をよく知られた一人の女性タレントという特権的な存在の言葉を起点にしてセールスが促されたという事実にそれ以上の意味はないが、興味深くはある。

　『世界の中心で、愛をさけぶ』が売れた原因を200頁余りに及ぶ活字のなかに求めるなら、答えを見失うだろう。内容を分析すれば理由がわかるに違いないと思い込む者は、真理のノマドではなく、ただの漂流者になってしまうに違いない。
　流行という現象は、モノの消費ではない。体験の消費である。あの有名な人も読んだ、あの人も読んだ、この人も読んだ、もう何万人の人が読んだ──それは、ひとつの祭りだ。祭りに参加せねば、自分だけ仲間外れになる。祭りに参加すれば自分も仲間になれる。時代後れにもならない。
　『世界の中心で、愛をさけぶ』という決して物語的に優れているわけではない本を手にし、最後まで読むということは、言ってみれば祭りの体験である。読むという行為そのものがひとつの祭りである。あの人も読んだ、この人も読んだ、もう何十万人の人が読んだ──同じように、自分もその本を読むという経験を済ませる。
　人は『世界の中心で、愛をさけぶ』という本、ひとつのモノが欲しいのではない。『世界の中心で、愛をさけぶ』を読んだという体験、みんなが話題にしている200頁余りの活字を最後まで追いかけたという体験、「みんなが読んだ小説を読んだ」という体験が欲しいのだ。
　流行にあっては、消費されるのはモノではない。体験である。セカチューにしてもたまごっちにしても着メロダウンロードにしても同じだ。体験の消費に引きずられて、結果的にモノが売れているだけの話なのである。

　悪意のあるタイトルは許せ。
　タイミングを逸することこそ、時代の寵児である。
　というわけで、親友の奥さんから借りた『世界の中心で、愛をさけぶ』を読んだ。
　所要時間、電車の中で20分。
　最初に感じたのは、白血病がロマンとして再び機能するようになったんだ、という驚き。
　つづいてふつふつと湧いて出たのは、
　果てしなくテキスト量の少ないエロゲーだな
　ということと、
　中高生という多感期を横断した、ゲーム中時間の長いエロゲーだな
　という感想だった。文体や雰囲気や設定や物語が持っているある種の若々しさや気恥ずかしさが、特にそういう感じがしたのだ。
　ただ、エロゲーとして成立するには、主人公がヘタレすぎている。
　まず、物語ののっけから主人公は泣いている。目が覚めて泣いているのは、この主人公には日常茶飯事のことである。
　次に、あの有名な空港のシーンで、主人公は「助けてください」と他人に助けを求めることしかできないでいる。
　ヘタレていることが作品にとって問題的かといえばまるっきりノープロブレム（空港のシーンで主人公が逞しく電話を駆けまくってしまっては、セカチューではない）なのだが、かつて『あめいろの季節』でヘタレ主人公を生み出してしまった当事者としては、八神ゆうじ君を上回るこのヘタレぶりには、いろんな意味で驚いてしまうし、感心してしまうのである。

　１つのゲームが発売された。敢えてその名は口にしないでおこうと思う。
　ゲームの開発が終わり一段落つくと、いつも行うことがある。
　ＦＥＰに登録してある単語を抹消することだ。
　たとえば、エロゲーのシナリオの場合、小説と違って会話は、話者の名前が併記されることになっている。
　具体例を示せば、

　【 美月 】「オッパイ……さわって」

　こんなふうに、台詞を言った人の名前を先に冠して、後に鍵かっこをつづける、という形式をとっている。すみつきかっこで閉じているのは、自分のスタイルだ。名前だけにしておくと、あとで一括置換する時に区別がつかなくなるからである。
　エロゲーのシナリオは、小説に比べて膨大だ。スピードが命である。だから、「【 美月 】」と書き記すにしても、いちいちすみつきかっこを入力して、半角空けて、美月と書いて、またすみつきかっこで閉じて、なんてことはしない。「【 美月 】」自体を、たとえば「み」というひとつの単語として登録しておくのだ。そうすると、「み」と書いて変換すれば一発で出力してくれる。それだけストレスが少なくなる。
　だが、ゲームが終わればその名前を使うことはなくなる。開発が終了して一段落すれば、その名前は不要になる。
　今回、新たに【 優斗 】【 瑛里華 】【 沙夜香 】という名前が消えた。恐らく二度と登録されることはないだろう。その代わり、また新たな３つの名前が辞書に登録されるのだ。

　筑摩書房の『資本論』を読んだ。
　20年ぶりの新訳というだけあって、意味も取りやすく、関連書籍のなかでは最も読みやすかった。
　ただ何かを得たかといえば、実は何もない。別に『資本論』関連の小説を書くわけでもないし、19世紀の経済について何かものするわけでもない。直接的・短期的な効果はまったくない。
　けれども、だからこそ読む価値があると言える。読書というのは、すぐ効果が出る読書（短期的な読書）だけではない。5年10年と潜伏して、ある日突然滲み出てくるような、長期的に効果が発揮される読書（長期的な読書）もまた、読書のひとつである。そして、この長期的な読書をしているかどうかで、自分の脳味噌が変わってくるのだ。短期的に効果が出る本ばかり追いかけていても、己のなかで柱は育たないし、生涯追いかけるテーマも生まれてはこない。
　物書きの脳味噌はウィスキーみたいなところがあって、長い間貯めて発酵させないと出てこない部分がある。短期的な読書だけでは、まともなウィスキーにはならない。
　すぐ効果が出る読書ばかりやっていると、5年10年後の自分が育ちにくくなってしまう。時々は、一見無駄に見える読書、短期的には利益のない読書をするのも、物書きには必要なことだ。

　YAKIYAMA LINEというサークルがある。
　主催者は、カルーア鈴木さん。
　この人の『RAISIN BREAD 01』という同人誌がいい。

　乳房に顔面を押しつけるようにして吸うその吸い方といい、その時の、吸われている女性のしぐさや表情といい、オッパイ好きのフェティシズムがよく表れている。乳吸いだけでまるまる３頁使っている執着ぶりも、自分にぴったりだ。自分は乳房は揉むのも好きだが、吸うと一番興奮する。
　冬コミの会場で２冊買ってこなかったことを真剣に後悔した。
　鉛筆のままでペン入れはしていないけれど、かなり乳魂（にゅうこん）の一冊である。
【 関連記事 】
⇒YAKIYAMA LINE『放課後エトランゼ』～同人誌～
⇒オッパイ星人の尺

　気取り屋やかっこつけには、ギャグは言えない。少なくとも、世代を越えて人を笑わせるということができない。
　かっこつけの人は、自分を意図的に崩すということをあまりしない。自分を馬鹿に見せたり、変態に見せたり、阿呆に振る舞ったりということをしないし、好まない。こう見られたいと思っているイメージがあって、それを人前でも貫こうとしてしまう。
　だが、笑いとは、かっこつけのダンディズムではない。むしろ、自分のルックスとのギャップを使って自分を崩してみせた結果、他人に起こる反応である。
　いかにもかっこよい男が、いかにも情けない状況を不幸な調子で語っていくから、ヒロシは面白い。彼がホストあがりのルックスの通りにかっこをつけてギャグをかましたところで、人は愛想笑いしかしてくれないだろう。自分を崩して、どんどん不幸な人に墮していくから、笑いの大衆性が生まれる。
　笑いを取った者の勝ち。何をしようが、笑わせた者の勝ち。そのためなら、自分を崩すし、馬鹿もするし、阿呆にもなる。そういう精神の持ち主が、人を笑わせることができる。
　お高く止まっている人、自分のイメージを崩したくない人には、ギャグは言えない。せいぜい巨人の堀内監督のように「山梨って変ですよね。山がいっぱいあるのに、山梨っていうんですよ」と開口一番特大のすべりをかまして中学生を沈黙させるだけである。
　かっこつけに笑いは取れない。かっこつけにギャグは言えない。自分を崩せない人間、くだらない自分像に固執している人間には、他人を笑わせることはできないのだ。

　エロゲーのシナリオライターに必要な辞典は、何だろう。
　普通の人は、語彙が足りないと感じているので類義語辞典をそろえたがる。
　だが、類義語辞典にろくなものはない。自分も６冊以上持っているけれど、まともに使えるのは１冊もない。普通のビジネス文書や他人の手紙なら使いようはあるけれど、小説やシナリオといった創造的なことには、類義語辞典は向いていない。クリエイティブとは、類義語辞典の知識を開陳することではないからである。
　エロゲーのシナリオライターに必要な辞典は、まず国語辞典だろう。日本国語大辞典第２版をそろえよ、なんてことは言わない。けれども、すぐ意味内容を把握するための辞典は必ず持った方がいい。これはハードディスクベースでもペーパーベースでもどちらでも自分に合う方でいい。
　次に必要なのは、同音同訓異字辞典だ。プロである以上、漢字の使い分けには気を配らなければならない。
　たとえば、「かわる」。
　代わる、替わる、換わる、変わる。
　状況に応じてそれを使い分けるためには、同音同訓異字辞典がないとできない。
　そこまで区別しなくてもいいじゃない、と思うかもしれないが、言葉のプロとはそういうことだ。
　あった方が便利なのは、赤ちゃんの名付け事典である。
　妻がいる人でも、赤ちゃんが生まれる予定のないシングルであっても、赤ちゃんの名付けの本があればキャラクターのネーミング時に凄く助けられる。
　あと、意外と助けになるのが、日本語の文型をまとめた辞典である。自分が知っている限りでは、角川書店『基礎日本語辞典』とくろしお出版『日本語文型辞典』の２つがある。
　『日本語文型辞典』は、日本語検定受講者と日本語教師向けの辞典だ。なので、「～したばかりに、（悪い結果）」とか、「とても……ない」といった言葉の結びつき、つまり日本語のコロケーションについて丁寧に例文つきで解説してくれている。
　ものを書いていると、時々このコロケーションの感覚がおかしくなったりずれたりする。そういう時に、日本語文型の本があると間違いに気づくことができる。物書きとして恥を掻かなくてすむ。
　シナリオライターを目指す人には、以上４種類の辞典を薦めたい。

　12/20（月）。
　8時起床。
　聖少女さんからH211ラフ到着。沙夜香乳吸い。非常にグッド！　これでイベント原画は6割完成。
　原画とイベントＣＧリストの対応確認。修正した最新のイベントＣＧリストをアップ＆メール。
　10時、二見文庫の小説。初乳揉みの場面。ようやく16頁に差しかかる。
　アキバblogを読む。
　「CLEAVAGE」がソフマップ４号店「アニメ・ゲーム館」で予約４位にランキングしていたことを知る。しかし、これは自分の力ではない。絵師の力である。
　11時11分、総合49頁。あっちを書いたり、こっちを書いたり。本番シーンを少し書いたり、5回目エッチの後の魔里亜を書いてみたり。
　DVD「エイケン後編」到着。
　cbookの週間販売ランキングに「山本令菜の 0学占い 女の金運・仕事運 ’05～’16／技術評論社／1,280」が入っていた。金運や仕事うんも気にするようになったということは、女が仕事に参加するようになった現れか。
　13時、総合52頁。
　15時、総合60頁。29頁まで完成。第1章終了。魔里亜乳揉み悶絶責めは終わり。
　電源がオフになったのを自覚。さあ、飯だ。秋葉原だ。
　と思ったら、なぜか続行してしまった。
　16時、総合65頁。40頁まで完成。第2章に突入した。次は「2」からだ。
　遅いブランチ。もはや夕食。
　『スペースアドベンチャーコブラ』10話を見て寝る。

　12/19（日）
　二見文庫から出る学園巨乳ポルノ。布団の中で、冒頭のシーンをイメージする。今日もいい天気だ。
　8時起床。
　サイトのリンクを色々と整理していたら、思ったよりも時間が経過してしまう。やばい、昨日と同じように時期を逸して書けなくなる。
　9時半、小説開始。
　台詞を案出するのと文章を案出するのとでは、密度も違うし、必要な時間も変わるのだ、と感じ始める。１日平均24頁というわけにもいくまい。いくまいが、それをやれるように考えるしかない。そのおかげで自分は成長出来るのだから。
　主人公の自宅は、三井ホームの「ラ・ロトンダ」を参考にする。
　10時すぎまでかかって、ようやく1頁終了。冒頭のスピードは、クライマックスの1/10か、と推測。
　11時すぎまでかかって、ようやく7頁まで終了。
　Ｆカップ・レフェリー、ミス・スティーブンが初登場のニュースを読む。乳が天然なればよろし。
　13時38分、11頁まで進展。
　ＬＤ6枚到着。『劇場版飢狼伝説』『バトルファイターズ飢狼伝説1＆2』を飛ばし見。特筆はなし。
　川崎へ。
　以後、野暮用。クリスマスプレゼントに向けた下調べ。
　書いたばかりの原稿を♀に読んでもらう。「いいんじゃない？」と落ち着いた声音。自分でも、今までのなかで一番無駄が少なく饒舌さも控えめで、洗練されていると感じる。
　19時、辞す。
　東海道線グリーン席で原稿の添削。さらに電車を乗り換えて、車内でエッチシーンの文章を書く。
　20時着。
　間髪容れず、駅を降りてから頭のなかでひねり回していた文章を書き記す。それからリライト。
　22時、14頁まで。総合36頁。
　22時半まで、メルマガ14号「報道の抑止力」。その後、オークション関連のメール。
　23時28分までかかって、電車内で書いた文章を移す。総合38頁。

　我が家のやかんは、音が鳴る。
　軽やかなハーモニカサウンド……というのが売り文句で、実際に聞いてみると、プラットホームの音にしか聞こえない。
　ついでにずいぶんと値段も張ってて5000円したりする。
　なぜかというと、ずっと前にやかいを燃やしてしまったからだ。
　たとえば、お湯を沸かそうとする。
　だいたい3分はかかる。
　3分あるなら、メールぐらい書けるな、と仕事してしまうのが物書きなのだ。しかも、メールを書きだすと、自動的に没頭してやかんのことを忘れてしまう。
　なので、よく空だきをする。
　11月のその日もまた空だきをやらかしてしまった。一仕事終えてメールを送信すると、なぜか焦げ臭い。
　誰だよ。
　隣の家の人、何魚を焼いてんだ？
　とキッチンを覗いた瞬間、ぎょっとした。ガスコンロで視線が凍結した。
　慌てて火を消したが、把手と本体のつなぎ目は燃えて真っ黒になってしまっていた。冷えてから持ち上げてみると、燃えてつなぎ目が剥がれてしまっていた。
　持ち上げられないやかんは、やかんではない。
　何度も空だきを経験したものの、さすがにこの日は恐怖を覚えた。おれ、死ぬかもしれんと思った。
　それで、やさましい音を掻き鳴らすやかんを買ってきたのだ。
　今のところ、幸い空だきはやっていない。うるさい音は好きになれないけど、命を失うよりはましだな、と納得している。

　つい先月書きあげた小説は、二見文庫から出ることになっている。
　内容は学園ものの巨乳ポルノである。
　乳シスト、乳スキー、オッパイ星人はすべて集まりたまえ～。

　と生意気を願いをかけて、12月14（火）の話。

　野暮用で横浜へ出かけた。
　その帰りに京浜東北線のなかで、ここ最近、二見文庫の小説で自分が残してきたことについて気がついた。
　否、自分が根本的に間違っていたことに気がついた。
　自分が二見文庫で書こうとしているのは、あくまでも、ポルノなのだ。
　お話ではない。ポルノなのだ。
　「どんなエッチシーンを書くのか？」ということからスタートしなければ、始まらない。ストーリー展開を主に考えようとしていた自分がいけなかった。
　こういう時には自己暗示をかけるに限る。
　曰く、放っておいても、自分はいいものを書ける。ひとまず、エッチシーンから始めよう……と。

　ずっとブログがお休みになっていたのは、別に夜逃げしていたわけでも、ヒッキーになっていたわけでもない。
　『ＭＩＬＫ・ジャンキー３』の打ち合わせのために札幌へ出張していただけである。

　以前、シナリオライターとテキストライターという話を書いた。
　自分でキャラクターもプロットも考えてシナリオを書いていくのが、シナリオライター。
　クライアント（ソフトハウス）が用意したキャラクターとプロットに沿って、ただシーンを埋めていくのがテキストライター。
　大雑把にいえば、そういう話だ。
　今日は両者の差に対して、もう少し踏み込んでみたい。
　シナリオライターとテキストライターの一番の違いは、何だろうか。実力的に両者を分け隔てるものは、何だろうか。
　一言で言うなら、構成力である。
　決してシーンをうまく書く力でも、笑える台詞を書く力でもない。
　たとえば、素人でも、イベントＣＧの案出しはできる。こんなイベントどうでしょう。こんなイベントＣＧを用意してみたら？　そういうのは、シナリオライターじゃないとできないことではない。
　しかし、問題はそれからだ。全部イベントＣＧが決まったとして、それをどんなふうに配列してどんなふうにつなぎをかまして一番しっくりする形にすればいいのか……となると、途端に困ってしまう。
　困ってしまうのは、構成力が足りないからだ。自分で何度も話を書いて、何度もつなぎで苦しんで、テンポについて悩んだ経験がないと、構成を考えることができない。
　どんなテンポでイベントＣＧをつないでいくのか。
　山場と山場の間にどんなつなぎをもうけるのか。
　どんなふうにつなぎをかまして、クライマックスへと気持ちよく運んでいくのか。
　そういったことは、構成力がないと出来ないのだ。それこそがまさに構成という作業だからである。
　構成力は、他人からプロットを与えられるのではなく、自分でもがいて書いていく経験によってしか培われない。プロット（構成の決められたストーリー）を与えられているテキストライターには出来ない芸当なのである。

　乳は大きさだけなのか。
　これに対して、今大英巨乳帝国のpage3ガール、Keely自身がこんなふうに答えている。
　「ちっちゃい胸より巨乳の方がセクシーだと思う？」に対する返答だ。

No, I think it's more to do with the shape. If they are small but sit well on a woman's body then that's sexier than boobs that are massive but really saggy! Nobody wants to see boobs hanging down to the ankles!

　saggyというのは、たるんでいるという意味。
　形の方がセクシーと関係あるんじゃないかしら、と彼女は言っている。
　だからといって形だけがすべてというわけではないけれど、巨乳は大きさだけではないという意味では真実を言い当てている。
　巨乳爆乳は、大きさだけではない。形も重要だ。
　巨乳を好きになれない人の中には、saggyな、醜悪な巨乳を見てしまったから、というのもある。
　自分も、高校生までは美乳派だった。許容できるのはＤカップだった。だから、愛しのプレイメイトといえばキャシー・セント・ジョージだったし、愛しのヌードアイドルといえば河合実果だった。垂れていないことがひとつの選定基準だったのである。
　巨乳爆乳という言葉にとらわれて、人は、乳というと大きさだけだと勘違いする。
　しかし、そうではない。乳には形だってあるのだ。大きさと形、さらに言うなら見た目のムチムチ感や弾力も合計して、巨乳であり、爆乳なのだ。