気取り屋やかっこつけには、ギャグは言えない。少なくとも、世代を越えて人を笑わせるということができない。
　かっこつけの人は、自分を意図的に崩すということをあまりしない。自分を馬鹿に見せたり、変態に見せたり、阿呆に振る舞ったりということをしないし、好まない。こう見られたいと思っているイメージがあって、それを人前でも貫こうとしてしまう。
　だが、笑いとは、かっこつけのダンディズムではない。むしろ、自分のルックスとのギャップを使って自分を崩してみせた結果、他人に起こる反応である。
　いかにもかっこよい男が、いかにも情けない状況を不幸な調子で語っていくから、ヒロシは面白い。彼がホストあがりのルックスの通りにかっこをつけてギャグをかましたところで、人は愛想笑いしかしてくれないだろう。自分を崩して、どんどん不幸な人に墮していくから、笑いの大衆性が生まれる。
　笑いを取った者の勝ち。何をしようが、笑わせた者の勝ち。そのためなら、自分を崩すし、馬鹿もするし、阿呆にもなる。そういう精神の持ち主が、人を笑わせることができる。
　お高く止まっている人、自分のイメージを崩したくない人には、ギャグは言えない。せいぜい巨人の堀内監督のように「山梨って変ですよね。山がいっぱいあるのに、山梨っていうんですよ」と開口一番特大のすべりをかまして中学生を沈黙させるだけである。
　かっこつけに笑いは取れない。かっこつけにギャグは言えない。自分を崩せない人間、くだらない自分像に固執している人間には、他人を笑わせることはできないのだ。