抽選会でガラガラと回すあれ、名前を知ってるだろうか。
　抽選器というらしい。
　価格は数万円程度のようだが、テーブルに乗っけて、法被を着て、ハンドベルを持ってチャリンチャリンと鳴らしてやれば、抽選会気分が味わえる。
　味わってどうするという突っ込みは措いとくとして、実は、あの抽選会、当てるコツがある。
　レバーを持っていきなり回すのは、御法度。
　回す前に、こぼれ落ちる抽選器用玉の色を思い浮かべるのである。具体的に思い浮かべられればられるほど、成功する確率が高くなる。
　そうして、よりリアルにイメージできたらレバーを持ってぐるりと回すのだ。
　意外とお望み通りの色が出てくる。ただ、イメージの具合が悪いと見事に外れ玉が出てしまうので、「信じる」ことと「イメージすること」が必要。集中力が低い状態だと、失敗する。そう、昨日の著者のように──。
　西武池袋の抽選会。
　イメージしたはずなのに出てきたのは、みごとに外れの白玉であった。これならおれのナニからこぼれだした白玉の方がよかったではないか（笑）。

　文学は、娯楽小説ではない。
　受け身でストーリーを追いかけていけばその展開で愉しませてくれる、というジェットコースター的乗り物でもない。
　文学は解剖するものである。どう分析してやろうかなと、知の戦略を練りながら、分析の罠を仕掛けながら読むものである。ただ流れを追いかけるだけ、ただストーリーを愉しもうとするのではいけないのだ。
　だが、批評理論を知らない限り、そういう読み方はしない。たいていの人は、感性で文学を読んでしまう。
　感性で拾おうとすると、その時自分が抱えているマイナスの感情や小さな絶望や精神的な傷やトラウマが反射される。
　たとえば、鏡は中学２年生の時、窓際の机でゲーテの『若きウェルテルの悩み』を読んだ。ロマン主義ばりばりの作品である。
　クラスに馴染めない疎外感。女の子を好きになってもなかなか振り向いてもらえないという孤独と小さな絶望。ニキビが激しくなったせいか、同級の女の子たちとの距離も１年生の時に比べて著しく遠のいていた。そういうマイナスなものを抱え込んでいたからだろう、絶望に追いやられて自殺へ突き進んでゆくウェルテルにシンクロしてしまって、危うく教室で泣きだすところだった。
　中高生の頃は特に感受性が高いため、自分の傷や不安感が精神的な皮膚のすぐ裏側にほとんど剥き出しになっていたりする。思春期の悩みとは、ほぼロマン主義の悩みである。だから、中高生はロマン主義の薫りを含んだ小説に弱いのだ。

　知り合いと話をしていて、不意にある感触を懐いた。エロゲーはすでにゆるやかな不況に入っている……。
　公然の事実なのかもしれない。あるいはただの推測なのかもしれない。
　だが、苦しいソフトハウスが漸増しているというのはそれほど外れてはいまい。現時点で恐らく今もっとも打撃を受けているのは、初期ロット2000本までのメーカーと販売本数5000本までのメーカーだろう。
　ボリュームインフレーションによるコストの増大。同人と商業の境界線の消失。
　内と外とで状況は悪化している。少なくとも、楽観視できる方向へは向かっていない。
　おまけに、コンシューマーのゲーム自体がエロくなり、オタク向けアニメもエロくなり、いたるところで乳揺れなどの過剰なエロティシズムが振りまかれている。社会がまるで汎エロ化へ進んでいるかのようだ。
　そんなエロ化するマーケットのなかで、エロをセールスポイントとしてきたエロゲーが、その意味と市場価値を揺さぶられているように感じられる。ただの個人的な感触にすぎないが……。

　ポルノ小説を書いている時、常にではないが国際的な違いを意識することがある。
　たとえば、今春４月に二見ブルーベリー文庫から出るものは、高校を舞台にした学園爆乳ポルノである。
　学園！
　あなたはどんなイメージを抱くだろう。人によって差異はあるが、恐らく日本人となると一定のゾーンのなかに収まってしまうだろう。だが、国が違うとそのゾーンをはみ出してしまう。「高校」というものに対して人々が抱くイメージも、期待するイメージも、国によって大きく異なる。だから、日本のポルノ小説をドイツ語や英語に翻訳したとしても、ほとんど外国では通用しないだろうな、と漠然と考えたりする。
　それは外れているかもしれないし、当たっているかもしれない。だが、そう考えさせる理由がある。
　エロティシズム──もっと言うなら発情装置の仕組み──は文化的差異を思い切り受けるものなのだ。
　国が違えば、文化も違う。何を羞じらいと感じ、何をエロいと感じるかという倫理コードも、エロティックコードも違う。倫理コードとエロティックコードは表裏一体である。両者が違えば、エロティシズムの質も違ってしまう。日本人がエロいと考えることを、即アメリカ人もヨーロッパ人もエロいと感じるわけではない。
　たとえば、近親相姦というのがある。
　近親相姦というと、日本人は「母×息子」を考える。だが、韓国人は「兄×妹」を考える。アメリカ人は「父×娘」である。
　国や文化によって、エロティシズムの質や内容は違うのである。それは部外者にはなかなか把握できない。たとえば、女性の素顔が常に隠されている世界で生きているイスラムの人たちが感じるエロティシズムは、我々日本人には想像しづらいだろう。
　エロティシズムは、万国共通ではないのである。

　すべての主婦がそうというわけではないけれど、多くの主婦はきわめて受動性の高いcomplaining animalである。すなわち、自らは何もせずにいかに夫にリッチにしてもらうかを夢見ているという点において。また、プラスアルファを行わずひたすら不平の対象を探して文句を言い続けるという点において。
　何かを得るためには代償がいる。人生の美味というのは棚ぼたではなく、自らの行動によってつかむものである。それは重力の法則と同じくらい当たり前のものだ。それは、何も栄養を摂取せずに生きられないのと同じように明白なことである。
　だが、大半の主婦は、その成功の万有引力の法則すら無謀にもゴミとともに捨て去ってしまう。夫をほめなさいと言われても、聞きはしない。ほめられるべきは自分であると言い張る。
　よき主婦たちはそうではないが、悪しき主婦たちは、自分がこれ以上何かをするのがいやなのだ。感情的にいやだというのではなく、とにかく自分がこれ以上何かすることがいやなのである。
　愚かなことだ。本当に欲しいのは自分が夢見る生活であるのに、それを実現するために必要なことをしないとは。
　だから、こういうきつい言い方をしてみよう。プラスアルファを行わない主婦は、徹底して敗者であり、敗北論者であり、卑怯者であると。
　ところで、そういった主婦独特の悪癖は、主婦だけのものではない。社会に出た青年も共有しうるものなのだ。

　mixiというものがあるのを知ったのは、去年の終わり頃だ。
　他人の紹介がないと入れないそうだ。入ると、友達が紹介文を書いてくれたりする。自分も友達に対して紹介文を書いたりする。
　知り合いの人は、かつてのニフティみたいなものだ、と説明してくれた。なるほど、インターネットが普及する前のニフティに自サイトがくっついたようなものか、と鏡は納得した。
　納得したが、わからなかった。ものは試しと覗いてみたけれど、存在意義がわからないのだ。
　mixiでは、自分の日記をつけることもできる。レビューを書くこともできる。自分でコミュニティを作ることもできるし、コミュニティに参加することもできる。
　mixiは他人の紹介がないと入れないので、インターネットのように全方位に対してオープンしているわけではない。むしろ、ある程度の閉鎖性が保たれている。
　ただ、完全に閉鎖しているわけではない。日記やレビューは、mixiに入っている人なら読めるようになっているようだ（友達だけに読ませるか、読ませないかの選択はできる）。つまり、局地的・限定的にオープンになっているわけで、「完全非公開」でも「完全公開」でもなく、「限定公開」なのである。
　鏡はまいってしまった。
　この限定公開の場で、どうして日記をつけるんだろう。どうしてレビューを書くんだろう。
　わからない。
　なぜ、限定公開の場なんて作ったんだろう。
　これはしばらくわからんな～、と思っていたら、プロフィールにたいしたことも書いていないのに、見に来てくれた人の来歴がついていた。どうやら自分が覗きに行った時に相手にも来歴がついて、それで来てくれたらしい。
　ああ、こういうことで広がってくる縁があるんだな、と思った瞬間、少しだけmixiの魅力がわかったような気がした。コミュニティというもの、共同体というものからかけ離れた生活をしていると、なかなか鈍感になるもんである。

　鏡はサッカーが好きである。
　高校時代、ユベントスがトヨタカップを獲得したことに狂喜して、黒板に「ユベントス万歳!!」と書いたぐらい好きである。
　けれども、このブログではサッカーを扱わない。今後もサッカーについて触れることはないだろう。
　鏡にサッカーをプレイした経験がないわけではないが、しっかり部活をやったわけでもないし、また「３－５－２」などの戦術システムに対して知識があるわけでもない。だから、サッカーについて書けば素人まみれの的外れな論評になる。そうわかっているから、サッカーについて書かないのである。
　日本－イラン戦には個人的に言いたいことがある。ジーコに対して一発かましたいこともある。だが、それを「ブログ」というレベルで拾い上げようとは思わない。駄文だと思うことは、掲示板レベルで消化する。
　鏡のなかで、掲示板というのとブログというのと日記というのとは明確に分かれている。
　残したいこと、多くの人に伝えたいことは、ブログ。
　常連の子たちと分かち合いたい、毒を吐きあいたい場合は、掲示板。
　伝える必要はないが自分のために残す必要があることは、日記。
　こんなふうに区別している。

　先日、知り合いの物書きの子と食事をした。
　その際に今書いているという原稿を見せてもらったら、校正原稿のように「ここが１頁の大きさだよ」と示す十字の印やら二重線やらが引いてある。
　もう校正やってるの？　と聞いたら、自分でチェック中の原稿だという。ソフトを使うと本物の校正原稿みたいにしてプリントアウトできるそうだ。
　雑学に疎い鏡は、へえ～っと驚いてしまったのだけれど、でも、その心理は凄く理解できた。できるだけ書店に並べられたものに近い形にしたい──完成形に近いもので見たいというのが、書き手の心理だからだ。別に完成形を見なくてもいいのならば、原稿用紙に手書きしている。パソコンで書くのは、いくらでも手直しできるからという理由よりも、実際に印刷された形、店頭で売られている形に近い姿を見ることがができるから、というのがあるように思う。
　鏡も、アマチュア時代に『巨乳教室』を書いている頃は、真ん中をあけてプリントアウトして、それをきれいに折り畳んで両端を綴じて、ちょっとした本みたいな感じにして悦に入っていた。書店に並べられている形にした時にどんなふうに見えるのかを見たかったし、そうした時に文章的にどこがよく見えてどこが悪く見えるのかをチェックしたかったのだ。
　物書きは、書かれている文字だけをコントロールしたいわけではない。どんなふうに字が埋まってどんなふうに余白ができるのか。余白もコントロールしたいと思ってしまう生き物である。
　だからなおさら、できるだけ本物に近い活字でできるだけ本物に近い行間でできるだけ本物に近い体裁でプリントアウトして、チェックしたいと思ってしまうのだ。

　自分のやりたいことが見つかるまで、と若い子たちは言う。
　けれども、その「やりたいことが見つかるまで」の場つなぎの数年間で、どれだけ損失を重ねることになるのか、想像できていない。数年間フリーターをやっても、履歴書には経歴はつかない。その人の仕事人生に、明確なキャリアパスはつかない。次に転職する時に、人事の人をはっとさせるキャリアパスも経歴も残せない。
　数年間の間に、確実に年はとる。歳をとればそれだけ労働市場で価値を失ってしまう。「やりたいことが見つかるまで」の場つなぎをしているうちに、自分の価値を貶めてしまうわけだ。
　いきなり社会に出ていくのは怖いけれど、人生は所詮、虎穴。飛び込むのに怖さがないはずがない。恐れて無為徒食を重ねても、やりたいことは遠のくだけだ。拱手するだけでは、やりたいことが見つかりづらくなるどころか、かえって己の労働的価値を損じるだけである。
　社会には、学校よりももっと成長の可能性が秘められている。無駄に思えること、損失に思えることにも、必ず成長と成功の因子がある。それは学校では経験できないことだ。
　だから、やりたいことを見つけたい人は、なおさら社会に飛び込んだらどうだろう、と鏡は思う。「飛び込んだ」という行動そのものが、見つけるための手がかりになっていくことだってあるのだから。

　贅沢なんじゃないか、と思う。
　やりたいことが見つかってから働きたいというのは、贅沢なんじゃないか、と思う。「やりたいことが見つかってから」というのは、覚悟を先延ばししているだけのように思えるのだ。初めてスキーをしようとする人が「うまくなってからスキーしたい」と言っているのと変わらない気がするのである。
　社会に対してデビューする時期を前にして尻込みする気持ちはわからないわけではない。鏡が大学4年生の時にも、漠然とした不安はあった。社会に出るといっても全然イメージはつかめなかったし、自分が社会的に有用であるという確信も得られなかった。
　けれども、やりたいことが見つかるまで時間をもったところで、それはただいたずらにモラトリアムの時間を延ばしているだけにしかならないし、自分が成長する時間を作るということにもならない。自分のやりたいことが見つかるまでといってデビューの時期を遅らせても、それだけ自分が成長する機会が失われるだけの話だ。
　人生は半分博打である。失う覚悟なく飛び込んだって得られるわけではない。失うことなく一発で成功しようとしたって、それは虫がよすぎる。ただのチキンハート、覚悟がないだけである。
　社会に飛び込んで、あ、違ったと思って後悔したって構わない。その後悔は必ず自分の栄養になるし、その後悔があるからスタートできるのだから。鏡だって、会社に入った時「しまった」と思った。ここはおれが入るべき会社じゃなかったと思った。少なくとも英文科の人間が向かうべき場所ではなかったと思った。就職活動で方向性を間違ってしまったと思った。
　けれども、間違いで入ってしまった会社で過ごした2年間は、自分の基礎にもなったし、エロゲー業界でディレクターやプロデューサーをする時に凄く役立ってくれた。あの上乗せ、2年間の「迷い道」があったからこそ、今の自分がいるのだと思う。
　人生は博打である。負けて損したと思ったお金も、必ず人生にプラスとして返ってくるものだ。「自分のやりたいことが見つかるまで」と完全武装しなくたって構わない。人生とはいかに完全武装するかではなく、いかに立ち回るかなのだから。

　だいぶ前の話になる。
　『週刊フライデー』がシャラポワのブラサイズを突き止めたらしい。彼女が着用していたブラジャーには、「34B」のタグが張られていたそうだ。
　けれども、それからの記事がいただけない。シャラポワのバストサイズを88センチのＢカップと推定してしまっているのだ。
　同じブラジャーでも、国が違えば規格が違う。Ｂカップといっても、アメリカと日本ではサイズが異なっていたりする。概して、アメリカの場合は日本のサイズより２サイズほど大きいらしいのだ。
　アメリカのブラサイズの求め方というのは、ちょっと複雑になっている。説明するとややこしくなるのだけれど、「34B」の34というのは、正確なアンダーバストのサイズとは違うらしいのだ。なぜだか、アンダーバストに足し算を加えて求めた数値らしいのである。
　それから色々と逆算していくと、アンダーバストはだいたい29インチ。
　トップバストが36インチほど。
　その差は7インチだから、トップバストとアンダーバストの差は、約18センチ。
　シャラポワのバストは、92センチＤカップというところか。日本のブラなら75Dというところだろう。

　オッパイ星人というのは欲張りなものだ。否、フェティシストというのは総じて欲張りなのだろうが、フェティシストというのはできるだけ長時間フェチを耽溺したいと願うものである。
　乳吸いひとつにしても、うんと長く堪能したいと思うのがオッパイ星人である。だから、「右のオッパイを舐めて、左のオッパイを舐めて、すぐさま股間へ……」と途中経過地点のようにあっさり通過してみせるアダルトビデオなんかに当たると、テレビ画面に飛び蹴りを喰らわせたくなる。
　なぜ、そこでもっと立ち止まってオッパイを吸いまくらないのだ？　なぜもっと執着しないのだ？　もっとしゃぶりまくらんかい。
　と怒鳴りたくなる。風俗に行っても、やっぱりしつこくしゃぶってしまうのだから、フィクションに対しても同じことを期待しても不自然ではなかろう。
　オッパイ星人にとっては、ただ乳を吸えばいいわけではない。ただ乳を揉めばいいわけではない。
　オッパイ星人が望むようにしつこく、オッパイ星人が求める尺で乳を吸い、乳を揉んでほしいのだ。
　それを実現しているのが、以前も紹介したカルーア鈴木さん主催するYAKIYAMA LINEの『RAISIN BREAD 01』である。
　ただオッパイを吸うだけではない。しっかり吸いつき、女性を悶えさせ、さらに吸い伸ばし、ちゅぽんと乳首を離し、また吸いついて乳首を吸い込み、乳首を片手で転がし、また女性を悶えさせる。
　オッパイ星人が望んできた「これくらい長くオッパイを吸ってほしい」という尺が忠実に再現されているのである。乳吸いの場面だけで言えば3頁だが、「乳を吸った時に女性にはこんなふうに反応してほしい」という部分もしっかり描かれており、ちょっとしたオッパイ星人のバイブルのようになっている。まだ手にしていない人は、是非手にしてみてほしい。
　最後にお店の方へ。一言言っていただければ、POPにお書きします（笑）。

　人生は学力テストではない。
　減点法ではなく、加点法の世界である。
　だが、百点満点ばかり狙ってしまうと、減点法で自分を見るようになってしまう。当然、自分を責める。窮屈になる。自信が身につかない。結果、自分の目指すところから遠ざかるということになる。
　また、いきなり百点満点を狙うと、ついついアクセルを踏みすぎてしまう。当然、ホイールスピンを起こす。車なら白煙が上がるところだが、精神の場合はひたすら疲弊して消耗する。結果、夢を追いかけるエネルギーを失ってしまい、またまた自分の目指すところから遠ざかる。
　シナリオでも、最初から「すげえシナリオを書いてやろう」「最高のお話を書いてやろう」なんて力みすぎると、ホイールスピンを起こしてしまってちっとも進まない。進まないから焦る。焦るから疲弊する。疲弊するから書くエネルギーが失われる。結果、間に合わない。いいものもできあがらない、という流れが出来上がってしまう。
　最終的に自分が目指す最高形に近づけばいい、今はとにかく6割程度でいいからと満点を狙わずに書くと、筆はするすると進む。
　成功というのは、いきなり満点を取ることではない。ましてや、失敗を完璧に避けきることでもないし、失敗という減点を完全に回避することでもない。
　成功とは、いわば毒を薬に変えることだ。失敗すらも糧に変えてエネルギーにしてしまう。失敗すらも夢に近づくための力強いステップにしてしまう。そういう精神と、そういう精神の元にたどりついた次元を、成功と言うのである。
　減点を恐れる満点主義、減点を回避しようとする完璧主義は、逆に夢の消失と失敗を生み出してしまう。
　人生は、失敗した時にどのくらい立ち回れるかである。うまく行くように運びつつも、うまく行かなかった時には迅速に的確に立ち回って、その迂回すらも近道に変えていく。それが成功の精神なのだ。

　芸術的な絵画というのは、素人がぱっと見てもわからない。ピカソの絵を見ても、あまりにも実写から隔たったデッサンの狂ったような絵を前にして感嘆する素人は、あまりいないだろう。オバサンなら「なんでこんな変な絵を描いているんやろ」「下手やなあ」と思うくらいである。けれども、芸術的な絵画とは違うイラストなら、普通の人でもわかる。描かれているのは、同じ絵のはずなのに不思議な話だ。
　同様に、芸術的なヌード写真は普通のお兄ちゃんには「わからない」が、アイドルの写真集ならばサラリーマンでも「わかる」。被写体になっているのは同じ女性のはずなのに、これまた不思議な話である。
　わからないのは、芸術には芸術なりの読解法があるからだ。それを身に着けないまま、ただ「絵」として眺めただけでは理解できない。芸術を「わかる」には、芸術の読解法を身に着けていなければならないのである。歌舞伎の文法を知らずにただ歌舞伎を鑑賞しただけでは何もわからないのと同じだ。
　それは小説にも当てはまる。
　大沢在昌や横山秀夫や森博嗣を読んで「わからない」という人はいない。けれども、村上春樹や綿谷りさを読んでも「わからない」という人は大勢いるだろう。娯楽小説は理解できるけれど、純文学は読んでもわからない。
　純文学がわからないのは、文学の読解法を知らないからである。芸術的絵画と同じだ。絵だから、ヌードだから自動的に理解できるわけではない。専門的な読解法を知らないと理解できないものなのだ。
　文学も同様である。娯楽小説と同じ活字だから、同じ日本語だからといって自動的に理解できるわけではないのである。
　娯楽小説は、普通に読めばわかるように書いてある。けれども、純文学はそうはなっていない。専門的な読解法──具体的に言えば批評理論──を知らないと文学は解読できない。
　文学は、いってみれば様々な批評理論によってエンコードされることを待つ、暗号みたいなものである。批評理論を使って、メタファーやシンボルや構造を読み解けばわかるようにはなっているのだが、ほとんどの人は批評理論を知らない。文学部に入ったって、批評理論は学ばないのだから、当たり前である。
　だから、文学はわからない。赤外線ゴーグルを装着していないと赤外線を見るこことができないのと同じように、批評理論を身に着けていないと文学はわからないのだ。

　『CLEAVAGE』を制作中、ガス抜きをしましょうと、担当さんとどじょう鍋を喰らいに出かけた。うまいもんを食ってガス抜きをしましょうと言ったのは鏡だが、どじょう鍋は担当さんのリクエストである。
　実は、鏡、かなりびびっていた。
　鏡は川魚が大の苦手である。否、魚全般は刺身をのぞいて苦手である。子供の頃、骨が刺さりそうな魚があって怖がっていたら、父親が癇癪を出して「食べろ！」。それで、パクンとやったら、見事刺さってしまったのだ。
　漫画なら「お父ちゃんの嘘つき～ぃ！」で済むが、現実はそうはいかない。スター誕生、トラウマ誕生である。母親はきれいに魚を食べる人なのだが、次男坊は下手糞というのは、このあたりに起因しているのかもしれない。
　だから、約束してからもずっと後悔していた。前日になっても、「やめときゃよかった」「体調不良ってことにしとこうか」なんて考える始末。まことにオッパイ星人としてだらしない体たらくだ。
　当日は快晴であった。
　まるで骨が突き刺さったような、よい天気だった。ほぼ意味不明だが、特に意味はない。初心者なので骨抜きで頼んであるけれども、それでも怖くて仕方がない。
　まずかったらどうしよう……食べられなかったらどうしよう……トラウマになったらどうしよう……。
　うんうん考えているうちに担当さんが来てしまった。万事休すである。
　橋を渡って予約してあるお店へ。お座敷に通される。
　やがて、どじょう鍋が運ばれてきた。きれいに開いたどじょうがまるて生贄のように盛られている。気分は処刑前の少年である。
　いざ、どじょう鍋が始まった。
　逃げて鯉の洗いばかり食べる。担当さんに「食べないんですか？」と言われて、「え、うん」。
　ようやくどじょうを口に運んだ。
　意外に食べられる、というのが最初の感想だった。もっと泥臭いかと思っていたが、そうでもない。骨もない。当たり前だ。骨抜きにしたのだから。
　よかった。食べられた。
　快晴の意味が、その時やっとわかった。そういえば、雲ひとつなかったな、と──。

　本日のpage3 girlは、以前も紹介したKeely。
　明日の朝には更新されて別の女の子になってしまうので急げ急げのボリュームバスト。
　こういう、むっちりと盛り上がっていかにも弾力のありそうなバストは、鏡は大好きである。乳腺葉の発達していないふにゃふにゃのバストは手にした途端こっちの欲望もふにゃふにゃになってしまうが、乳腺葉が乳房いっぱいに広がって充満しているような、見るからに弾力があって高く隆起している乳房を見ると、しゃぶりつきたくなってしまう。乳房の快感の90％は揉むこととしゃぶることにあるので、それを同時に満たしたくなる。
　page3 girlというとMichelle Marshが有名だが、恐らく乳房の弾力ではKeelyがMichelleを凌いでいる。他にいい巨乳page3ガールといえば、Sophie Howardか。
　それにしてもさすが大英巨乳帝国、巨乳スターが豊富だなと羨ましく思われる。90年代にはマリア・ウィッタカーもいたし、16歳でデビューしたナタリー・Ｊ・バヌスもいたし、隆起弾力乳の代名詞みたいなドナ・ユーインもいた。ゲイル・マッケンナもまだ胸がパツンパツンだった。
　80年代には、歌手としても活躍したサマンサ・フォックスがいた。浪人時代に手に入れた彼女のカレンダーは、今でも宝である。
　70年代から80年代にかけては、あのジョアンヌ・ラザムがいた。ラーラ・ディーンもいい乳をしていた。この四半世紀にわたって良質の巨乳スターを輩出してきたのだなあ、と甘いノスタルジーに浸らされてしまう。
　イギリスの乳は、やはりええのう。

　人はもっと注意せねばならない。ありとあらゆるエンターテインメントの中で、ゲームだけが大容量化という恐竜的進化を遂げていることを。
　たとえばエロゲーを見よ。
　1995年まで、エロゲーは、<5MB>のメディアで語られるエンターテインメントだった。フロッピーディスクの枚数が5枚だったり10枚だったりというのはあったけれど、それは分厚い小説と薄い小説があるようなものだった。
　だが、ＣＤ－ＲＯＭの登場によって、<650MB>という100倍以上の大容量で語られる世界に変わった。さらにＤＶＤ－ＲＯＭの発明によって、実にDOS時代の1000倍近くに値する<4.7GB>という規模で語られる世界になってしまった。
　4.7GBというのは、普通の文庫サイズの小説にして3万冊という途方もない世界である。
　フィルムという世界、出版物という世界では、メディア自体の大容量化は起こってはいない。映画の2時間枠が20時間枠になることはないし、漫画も1頁あたりの大きさが今の10倍になることもないし、推理小説が必ず2000頁以上の長さを持たなければならないということもないだろう。せいぜいお正月の特番で12時間連続ドラマが放映されるぐらいだ。
　シナリオ単体のボリュームにしても、DOS時代からWindows時代への移行期、鏡が要求されたシナリオ容量は、1ゲームあたり200KB程度だった。今や、フルプライスのゲームには2MB近くが要求されるようになってしまっている。かつては小説1冊分だったのが、今では小説10冊分になっているのだ。それは純粋に恩恵と呼ぶべきなのだろうか。それとも罠──自らはめてしまった首輪なのだろうか。