八方美人とは、批判的によく使われる言葉である。
　誰にでもいい顔をしてしまう人、四方八方いい顔をしてしまう人。そんな人のことを八方美人という。どの方向から見ても美しく見える難点のない美人から派生した意味だが、今では悪い意味しか残っていない。
　しかし、八方美人にはひとつ美人に見えない方角がある。
　決して美人になれない、９番目の方角というのがある。たぶんに自業自得とはいえ、八方美人の悲しみと言ってもいいかもしれない。
　それは、自分に対して美人になれないことである。
　他人にばかりいい顔をしすぎるあまり、肝心の自分に対してはいい顔ができないのだ。むしろ、自分に対していい顔をすることを犠牲にして他人へのいい顔が成立すると言ってもいい。自分の本質を犠牲にして平穏を得ようとしているわけである。
　自分を大切にしよう、自分にいい顔をしようとすれば、どこかで他人と衝突する。自分を大切にするということは、自分を通すということである。それは、宿命的に他人との衝突とつながっている。
　ある意味、自分に対して最も不誠実であり、自分に対して最も裏切り者であるとも言える。衝突を回避すれば、一瞬自分は守られたかのように見える。しかし、守られたのは自分の本質ではない。ただ面倒に巻き込まれることから自分を遠ざけているだけである。それは平穏を守っているだけであって、自分の本質を守っているわけではないのだ。
　八方美人が嫌われるのは、誰にでもいい顔をするからではなく、本当の自分を大切にしていないからかもしれない。上っ面の自分、その場その場の自分しか大事にしていないから、八方美人は悪く言われるのかもしれない。

たしかに、８方美人を基準に９個の升目を書いたとき、
真中があまっていますからねぇ。
ただ、９方美人って、相当疲れそうですねぇ・・・。
自分も相手も大事にする、という。

９マス全部は埋められない定めなのです。別の枡目を埋めると、違う枡目が空いてしまう。
相手を大事にするためには、本当の意味で自分を大事にしているのが必要。でも、それは低次元の
自分本位とかわがままとは違うのよ。