佐藤可士和といえば、今最も勢いがあり、名前も知られているクリエイターである。正確にはクリエイティブ・ディレクターと言った方がいいのだろうが、知らない人にはホンダ・ステップワゴンのＣＭをつくった人といえば、ああ……とうなずくかもしれない。
　その佐藤可士和が初めて書いた著書が、『佐藤可士和の超整理術』である。「空間の整理術」「情報の整理術」「思考の整理術」の３つが取り上げられている。
　彼の仕事場は、非常にものが少ない。部屋の中に、机があってパソコンがあって椅子があって、それくらいである。本すら見当たらない。美少女ゲームのソフトハウスとは非常に対照的である。美少女ゲームのソフトハウスの場合、たいていパソコンデスクの上に本や雑誌があり、モニターの上にはフィギュアが飾られていたり、ごちゃごちゃで趣味の部屋と渾然一体となっているからである。
　曰く、人間は普段見るものに影響されるので、ごちゃごちゃとものがあるところだと、仕事がはかどらないそうだ。これは自分の経験でもわかる。
　最近まで本棚にぎっしり包囲された６畳の和室で仕事をしていた。棚に約1000冊の本がある。机はテーブルとパソコンデスクを横長に連結して幅２メートル半近くの世界を堪能していたのだが、どうも息が詰まってしまう。
　それで、少し狭くはなるが、４畳半のフローリングの部屋に移行したのだ。パソコンで空くとテーブルをＬ字型に連結した。テーブルの上で仕事をすることにして、パソコンデスクの上には、日本語大辞典を並べた。本棚は、ほとんどない。椅子の後ろの低い本棚以外、ゼロである。パソコンデスクとテーブルと椅子以外、ほとんどないような仕事場に改造したのだ。その途端、猛烈に仕事をするようになったのである。ベルダ時代のスピードが戻ったのだ。驚くべき「空間の整理術」である。これは、いい。
　ただ、「情報の整理術」と「思考の整理術」は、個人的にはあまり得るものがなかった。すでに物事の本質をつかんで思考判断している人にとっては、この２つに有用性はないかもしれない。でも、立ち読みしてみるのには、おもしろい本である。
佐藤可士和の超整理術