セックスと暴力は紙一重である。そこに愛と合意がなければ、それは暴力となり、あればセックスとなる。
　６月７日の午後11時すぎ、地下鉄都営新宿線小川町駅と東京メトロ丸ノ内線淡路町駅を結ぶ地下通路で猥褻な行為をしたとして番組制作会社の役員が捕まった。好みの女性だったという理由で、女性の手首をつかんで壁に押しつけ、胸をさわったり耳や首筋を舐めたりしたのだという。キスはどうやら不発だったらしいが、時間にして30分以上。
　被害に遭った女性にとっては、なんとも迷惑な話だ。しばらく地下鉄の連絡通路は心配で歩けないだろう。
　セックスか暴力かは、文脈で決まる。二人が恋人同士であり、互いに望んだことであるならば、セックスとなる。だが、一方が勝手に望み、合意も愛もなしに同じことをすれば暴力となる。
　そして、どちらにもポルノは成立する。合意の場合は、その合意までのプロセスかセックスのプロセスに焦点を、合意なき場合は、合意ないまま相手を意のままにしていくプロセスに焦点を当てて、ポルノは成立する。
　だが、相手の反応はどちらの場合も虚構だ。そして、そのことは誰に聞かずともほとんどの人間はわかっている。わからなかったから猥褻行為を犯すということは、ほとんどない。境界線を越えるスイッチは、虚構という外部に超越しているのではなく、本人の内部に内在しているのだ――それが特殊であるか万人に普遍的であるかの議論は別として。