コトブキヤ限定　有栖川 椎（ありすがわしい）【完成品】

　萌えに対するアンチテーゼとして恐らく最強の部類に属するのがコトブキヤ限定 有栖川 椎【完成品】である。
　これは、萌えブームの反動なのか。それとも、萌えバブル自体がフェイク（幻想）だったのか。人は現実とイメージの隙間に潜むイメージを愛する存在なのか。
　いや。
　純粋に山下しゅんや氏のエロ力（ぢから）、イメージ力のなせる技なのだ。
　ホビーショップコトブキヤ限定で、またまた山下しゅんや氏デザインのエロフィギュアが出ることになった。
　有栖川椎（ありすがわ・しい）。
　山下しゅんや氏のイラストから飛び出した、エロ・ヒロインである。
　以前、山下しゅんや作品集 1/7 ロザーナを取り上げて、氏の絵には肌の匂いがすると書いた。今回の有栖川椎【完成品】も同じである。いや、そればかりではない。山下しゅんや氏のイラストから飛び出したエロフィギュアには、萌えフィギュアには決して感じることができない女の匂い、牝の匂いがする。
　とうてい現実世界にいるとは思えない萌え絵のヒロインたちと違って――現実世界にいなければならないという法もないが――山下しゅんや氏のイラストの世界を飛び回るヒロインたちには、生々しい女の匂いがある。男を誘惑すると同時に罠にかける、可憐さと毒々しさの入り交じった牝の匂いがある。
　現実の女からオンナ性を、牝性を抽出したその濃密なイメージが、山下しゅんや氏の描くヒロインにはあるのだ。そして、それを忠実に再現したエロフィギュアたちも、その濃密な薫りが漂っているのだ。
　まずは画像を見てほしい。

• 有栖川椎画像(山下しゅんや氏ブログ)


• 有栖川椎画像(コトブキヤ)

　現実離れした、しかし、現実的なフェロモン・ヒロイン、有栖川椎。ここにあるのは、大人の女の悩殺ではない。むしろ逆の、少女の悩殺だ。健康的に剥き出しになったお腹からにじみ出る、牝の薫り。足のラインからあふれ出る女の薫り。
　このフィギュアには、すでに性的年齢に到達した少女独特のフェロモンがある。淫臭ならぬ艶臭がからぷんぷんと放たれているのだ。
　原型製作は、マツケン氏。
　勿論、マツケンサンバではない。tF21所属の原型師である。マツケン氏といって真っ先に思い浮かぶのは、『マグナカルタ』のリースをフィーチャーしたWF2005夏のガレージキットだ。
　『マグナカルタ』というゲームをやったわけではないのに、リースのガレージキットが出た時には欲しくなったものだ。組み立てと着色を済ませた完成品は、ヤフーオークションでずいぶん高値をつけられていた。10万円という値段を一度見たことがある。
　それだけの破壞力をもつリースを造型したマツケン氏が、今回のフィギュアを手がけているのだ。期待というより、もはや確信である。山下しゅんや氏のイラストの魅力もとんでもないものだけれども、それをさりげなく再現してしまう原型師・マツケン氏の力量もとんでもないものだ。