先日、こんな本を読んだ。

【送料無料】永楽帝 [ 檀上寛 ] 価格：1,050円（税込、送料込）

　面白かった！
　史学科の先生が書いた本というと、膨大な資料を駆使して書いた伝記以外はメタレベルが低くて知的刺激が少ないものが多いのだけれど、壇上先生のこの本は、先生なりのパースペクティブが見えてよかった。
　元末から明への連続性。
　明の初代皇帝と第3代皇帝の目指したものの違い。
　永楽帝は５度にわたり、自ら軍を率いてモンゴルを征伐に出かけている。壇上先生は、その理由を「狂おしいまでに中華の天子たらんと欲した彼の情念」に求めている。
　ぼくは違うと思うね。
　答えはすでに著作の別の部分で壇上先生が記されている。
　簒奪したことによって、自分こそ皇帝にふさわしいこと、初代皇帝よりも目ざましい功績を残していること、そしてじぶんこそは華夷秩序の具現者であることを知らしめること。
　それこそが理由だったのではないかと思う。
　安南を征したのは、安南を牛耳っていたのが彼と動揺に簒奪を行った者だから。同族嫌悪もかなりあっただろう。
　永楽帝は、積極的に朝貢を進めることでいかに明が華夷秩序の中心にいるか、そして自分が皇帝にふさわしいかを証明しようとした。モンゴル親政はその流れで読むことができる。
　永楽帝は、若き頃、モンゴルとの戦いで力をつけた。だからこそ、モンゴルを叩いて明が華夷秩序の中心にいることを示したかった、華夷秩序に歯向かう者は容赦しないことを示したかったのだと思う。
　我は華夷秩序の中心なり。従う者には施しを、逆らう者には鉄槌を。それこそが偉大なる皇帝の姿なり。
　そういう気持ちだったのではないか、とぼくは考えている。