児童ポルノの単純所持を禁止しようという動き、さらに二次元も規制しようという運動は、ポルノ有害論に基づいている。ポルノ有害論とは、「ポルノを見ると性欲が刺激されて、性犯罪を行う」というものである。つまり、ポルノは性犯罪の起爆剤になっているとする考え方だ。
　この考え方は、あらゆるポルノを規制しようとする流れに簡単に延長されてしまう。したがって、「二次元はキモイオタクが見るものだから、別に取り締まられたって無問題」という差別的な考え方は通用しない。次は、自分たちが楽しむ実写系のポルノがやり玉に挙げられることになるからだ。しかも、どれが好ましくてどれがキモイポルノかは、ポルノを嗜まない人たちによって強引に決められるということになる。
　しかし、それに対する有効な反論が１つ現れそうだ。GIGAZIN.netが非常に興味深い記事を紹介している。

　モントリオール大学の科学者たちが普段からポルノを見る男性とポルノを一度も見たことがない男性を比較研究するための調査を実施しましたが、ポルノを見たことがない20代の男性が1人も見つからず、研究は頓挫してしまったそうです。
　しかし、男性は例外なくポルノを見るという実態が明らかになったほか、ポルノ視聴についてのさまざまなデータも採集できたようで、当初の目的とは違ってしまったもののなかなか興味深い調査結果となっています。詳細は以下から。
All men watch porn, scientists find - Telegraph
　20代の男性で普段からポルノを見る人と、ポルノを一度も見たことがない人を比較する研究は、ポルノを見たことがない被験者を1人も見つけられなかったため、最初のハードルでつまづいてしまったそうです。
「研究の手始めとして、わたしたちはポルノを見たことがない20代の男性を募りました」とモントリオール大学のSimon Louis Lajeunesse教授。「しかしながら1人として見つかりませんでした」
　当初の主題については調査できなかったものの、研究ではポルノを見る若い男性の習性については調査できました。ポルノを見ない若い男性はいないとのことなので、調査対象は「ポルノを見る若い男性」というより単に「若い男性」と言ってしまってもよいかもしれません。
　Lajeunesse教授らは20人の異性愛者の大学生の男性に聞き取り調査を実施しました。その結果、

■ポルノを初めて見た年齢は平均10歳。
■ポルノの入手源は90％がインターネット、10％がビデオ店から。
■シングルの男性は平均で40分×週3回ポルノを視聴するのに対し、恋人・パートナーがいる男性は平均20分×週1.7回。
■男性は自分の性的嗜好（しこう）・イメージに合致したポルノを視聴し、不快・悪趣味だと感じたポルノはすぐに放棄する。

というようなことが判明しました。
　Lajeunesse教授によると、ポルノを見ることによる男性の性的嗜好への悪影響はないとのこと。
「被験者の中には病的な性癖の持ち主は1人もいませんでした。彼らの性行為は、すべて実に標準的なものです」とLajeunesse教授。「ポルノによって彼らの女性観や恋愛観が変わったということはありません。彼らはみんな、恋愛関係をより円満で実りあるものにしたいと考えています」

　非常に意義の深い、重要な記事だ。特に「男性は自分の性的嗜好・イメージに合致したポルノを視聴し、不快・悪趣味だと感じたポルノはすぐに放棄する」という部分は重要だ。「ポルノによって彼らの女性観や恋愛観が変わったということはありません。彼らはみんな、恋愛関係をより円満で実りあるものにしたいと考えています」という部分も、非常に重要性が高い。これは、『レイプレイ』に対しての有効な弁護となりうる。『レイプレイ』に対して、イクォリティ・ナウは「女性の人権を侵害し、女性蔑視の考え方を促進する」と指摘しているからだ。だが、その指摘は、この研究成果によって容易に反論することが可能になる。
　ただし、この記事には、短所と長所がある。
　短所は、調査した個体数が20と少ないこと。このデータの少なさをもって有効な研究結果ではないと言われる可能性がある。現時点では推測たが、恐らく200になっても2000になっても、大方の結果は変わらないだろう。この研究が導き出した答えは、オナニーする男にとっては当たり前のこと。ポルノを嗜む男なら、この結果は誰もが身をもって知っていることだ。
　長所は、これがポルノ有害論に対する有効な反論になる可能性が高いということだ。調査数がさらに多くなれば、反論の材料として非常に大きな存在になる。何よりも、児童ポルノの二次元画像所持でも逮捕するほど厳しいポルノ規制を課すカナダでこの研究が発表されたというのは、大きな意味を持っている。日本語のみならず、英語でも広められる必要があるだろう。
　参考までに、英文記事も引用しておきます。

All men watch porn, scientists find
Scientists at the University of Montreal launched a search for men who had never looked at pornography - but couldn't find any.
By Jonathan Liew
Published: 1:22PM GMT 02 Dec 2009

Around 90 per cent of consumption was on the internet, while 10 per cent of material came from video stores Photo: GETTY IMAGES
Researchers were conducting a study comparing the views of men in their 20s who had never been exposed to pornography with regular users.
But their project stumbled at the first hurdle when they failed to find a single man who had not been seen it.
“We started our research seeking men in their 20s who had never consumed pornography,” said Professor Simon Louis Lajeunesse. “We couldn't find any.”
Although hampered in its original aim, the study did examined the habits of those young men who used pornography – which would appear to be all of them.
Prof Lajeunesse interviewed 20 heterosexual male university students who consumed pornography, and found on average, they first watched pornography when they were 10 years old.
Around 90 per cent of consumption was on the internet, while 10 per cent of material came from video stores.
Single men watched pornography for an average of 40 minutes, three times a week, while those in relationships watched it 1.7 times a week for around 20 minutes.
The study found that men watched pornography that matched their own image of sexuality, and quickly discarded material they found offensive or distasteful.
Prof Lajeunesse said pornography did not have a negative effect on men's sexuality.
“Not one subject had a pathological sexuality,” he said. “In fact, all of their sexual practices were quite conventional.
“Pornography hasn't changed their perception of women or their relationship, which they all want to be as harmonious and fulfilling as possible,” he added.