上野千鶴子氏「「女子力を磨くより、稼ぐ力を身に付けなさい！」上野千鶴子さんが描く、働く女の未来予想図」という記事が問題になっている。読んでみたけど、別に沸騰するまでもないじゃんっていうのが、おれの感想。

「結局のところ、日本企業の多くはいまだに男社会のルールを変えず、「オレたちのルールに従えるなら、お前たちも仲間に入れてやってもいいぞ」と女性たちに言っているだけです。ただし、こうした差別型企業は、グローバルマーケットにおける企業間競争に負けるでしょう。多様性を持たない組織が、世界市場の多様なニーズに応えるだけの製品を生み出すことなどできないからです。」

　これはまったくもってその通り。
　男性を活用するためにも「力のある女性」を活用するシステムが、日本企業には必要。

　小さい会社でやってるところはあるよね。
　みんな子供を持ってるところとか。そういう人たちで優れた人たちをみごとに拾い上げている会社はある。ただ、それを大企業はあまりできていないと思う。

　皆が沸騰しているのは、この部分。

「成熟期の社会では、皆が髪を振り乱して働き、他人を蹴落としてまで成長していかなくてもいいんですから。賃金が上がらないといっても、外食せずに家で鍋をつついて、100円レンタルのDVDを見て、ユニクロを着ていれば、十分に生きて行けるし、幸せでしょう？ 東日本大震災の後、日常が何事もなく続くのが何よりの幸せだと多くの方々は痛感したはずです。」

　つまり、まったりと日常を楽しむ幸せは残っている、そしてあなたたちはそれを幸せって思ってるんでしょ？　って意味。

　おれには皮肉に聞こえるな。
　半分素。半分皮肉。そんな感じ。

「女の分断の第１段階が「正規と非正規」だったとすれば、第２段階は「非婚と既婚」になるでしょう。少ない年収だって持ち寄れば倍になる。カップルとシングルの所得格差が拡大します。」

　この予想はそうだろうね。そういうふうになると思う。

「ちなみにヨーロッパでは、男性が結婚相手を選ぶ際、稼得能力の高い女性を選ぶという傾向がはっきりと出ています。日本でも男性の平均所得は減少していますから、結婚相手に「キミは働かなくていいよ」なんて言わなくなるはずです。つまり、稼げない女は、結婚相手としても選ばれなくなる可能性が高い。」

　この傾向も、だんだんと出てくると思う。
　今すぐにはでないけれど、たぶん、５年１０年でね。

「女性は年収300万円を確保しつつ、年収300万円の男性と結婚して、出産後も仕事を辞めずに働き続ければいい」
「女子力を磨くより、自分に投資をして稼ぐ力をつけなさい」

　この処方箋は、その意味では非常にロジカル。
　でも、間違っている。

　なぜ？

　今の女の子、男をレスペクトしてないもん。きついもん。そして男の子はやわくなってる。
　するとね。
　女子力がある人じゃないと、相手にアプローチ＆ゲットができないのです。

　稼ぐ力をつけたのはいいけど、男をつかまえられないよ、うわ～～んってたぶん、なっちゃう。
　だから、実は難しい処方箋になっちゃうわけ。

「日本の男子はか弱いままになるから、女子力（男をつかまえる力）と稼ぐ力をつけなさい」

　くっ。
　それ、きついですぜ、旦那。いや、女の子。

　それから年収300万って部分も疑問。
　非正規と非正規が結婚すると、もれなく両方が解雇という危険性が残っちゃうわけ。そして、それを招き寄せる可能性を、グローバリズムは持っている。っていうか、そうなっていく可能性が高い。

　そうなると、まったりと日常って世界も難しいってことになる可能性があるわけ。
　日本は成熟の社会。
　その指摘は当たっている。けれども、まわりはグローバリズムに取り囲まれている。まったりを維持できるかどうかは、だんだん微妙になってくると思う。

　相変わらず、HUFFINGTON POSTがしょうもない記事を載せている。
　日テレとフジで「取材」「監修」の深さが違う？「明日ママ」が批判され「僕のいた時間」が批判されない理由。

　記事の要旨はこうだ。
　批判を喰らった『明日、ママがいない』と、批判を浴びなかった『僕のいた時間』。何が違うのか。取材の度合いだ。かたや、非常に綿密にして真剣。かたや、非常にいい加減。取材に対する甘さが、両者の評価を分けた。

　作り手としての素人の意見だね。
　取材や監修の違いではない。

　そもそも、物語のデザインが違う。

　かたや、本格的社会ドラマ。
　かたや、なんちゃって社会ドラマ（つまり、社会ドラマではない）。

　ＡＬＳに苦しむ人の生きざまは、不況社会に苦しむ今の人々の姿に累なっている。
　しかし、『明日、ママがいない』で描かれる世界は時代錯誤（とんちんかん）。

　そもそも、『明日、ママがいない』は本格的社会ドラマとしては構想されていない。そういうものに対して、取材の真剣度が違うだの、監修が入っていないだのと批判して、「取材の度合い」を批判の焦点にするのは、正直、素人意見である。

　『明日、ママがいない』は、「野島伸司的な酷薄な世界、再び！」つまり、「90年代のフジの栄光、再び！」というだけの作品なのだ。

　したがって、第一に徹底的に時代錯誤であり、とんちんかんにノスタルジーなのである。バブル時期の考えのまま、バブル時期の作品を発表しているのだ。

　同じ土俵上のもの、すなわち「同じ構想でつくられたもの」ならば、両者に対して「取材の度合い」を問題にするのは正当だろう。

　しかし、同じものではない限り、同じ土俵上にはない。それを「取材の度合い」で括ってしまうのは、作り手ではないから出る意見、つまり、素人意見である。フジが「９０年代の栄光再び！」という考えでドラマをつくっている限り、たとえ『僕のいた時間』以上の取材を行っていたとしても、同じようなものになっていただろう。
　
　こんな馬鹿意見が正論のふりをして出てしまうところに、不愉快を感じる。この記事の著者は、取材不足ではないけれど、勉強不足だね。素人は黙ってらっしゃい。
　

　アメリカは、ほんと外交音痴になっているらしい。

キャロライン・ケネディ駐日米国大使 ‏@CarolineKennedy 1月18日
米国政府はイルカの追い込み漁に反対します。イルカが殺される追い込み漁の非人道性について深く懸念しています。

　頭に来たので、猛烈に反論ツイート。

@CarolineKennedy 我々日本人は、他国の食文化に対して反対する野蛮な宣言に反対する。どういう歴史やどういう地理的理由によってイルカが食用とされていたのか、あなた方は考えたことがあるのか？　そのような知識もなく断じるのが、大使の仕事か？　大馬鹿者。

@CarolineKennedy 日本では仏教が普及したため、四つ足の動物は基本的には殺生していけないことになっていた。だから、欧米と違って牛肉や豚肉は表立っては食べられてこなかった。しかし、タンパク質は摂取せねはならない。そのために魚が、鯨が、イルカが食用にされた。

@CarolineKennedy 日本には「殺生」という文化がある。その殺生のもと、生まれたのが鯨やイルカの食用である。つまり、宗教的な理由によって生じたものである。それを、あなた方は野蛮というのか。非人道的だというのか。そのように人の文化を断罪することこそ、非人道的ではないか。

@CarolineKennedy あなたは確かカトリックだったと思うが、あなた方欧米人は、キリスト教的な狭い倫理観や世界観で世界を断罪し、自分たちこそが人道的であり、自分たちこそが正義だと考えるきらいがある。だが、世界の文化が相対的であることは、レヴィ・ストロースが指摘している。

@CarolineKennedy 大使でありながら、あなたはそのようなことも知らないのか。まるて無学ではないか。あなた方の国から食肉の風習が入ってきた時、日本人はどのように反応したのか。そのことをあなた方は調べ、学ぶ必要性がある。

@CarolineKennedy 非常に重要な同盟国の文化（食文化）に対して、非人道的であると罵るのは、それこそ、非人道的であり、浅学非才であり、無学である。同盟国を大切にするということは、その同盟国の食文化も大切にするということである。

@CarolineKennedy 我々はタンパク質を摂取するためにイルカ漁を行っている。殺生という文化のために、イルカや鯨が食料とされている。なぜイルカが「海豚」と言うのか。なぜ豚の異名が「山鯨」なのか。すべては殺生という文化のためである。

@CarolineKennedy そういうことを理解しない人、そしてデータ採取のために２度も原爆を落として、そのことをアメリカ人に教育しないあなた方こそが、非人道的であり、野蛮である。

@CarolineKennedy 靖国問題でごたごたした「今」という時期に、なぜイルカ漁に反対して波紋を広げなければいけないのか。外交的にプラスはない。あなたは外交音痴である。そもそも言う必要のないことを、わざわざ言わなくていいタイミングで言うあなたに、大使は向いていない。

@CarolineKennedy 我々が懸念するのは、あなたのような無学無理解な人が軽率にTwitterで発言することによって日本人に嫌悪感を与え、日米同盟を決して強化しない方向にあなたが導いていくことである。あなたが赴任してから、正直、日米関係はよい方向には向かっていない。

@CarolineKennedy それでもあなたがイルカ漁に対して非人道的だというのなら、あなたに日本で大使をする資格はない。アメリカに帰りなさい。我々の食文化を理解せず、日本に来たばかりにもかかわらず文句を言う人間に、日本にいてほしくはないし、大使をしてほしくはない。

@CarolineKennedy 猛省し、懺悔しなさい。他国の食文化に対して、自分の個人的な倫理観で断罪してしまった罪深さを、懺悔しなさい。

　命懸けで懺悔していただきたい。
　人の国にやってきて、その国の食文化を批判するとは、おまえ、何しに来たん？　騒動を起こしに来たんか？

　なら、とっととアメリカへ帰れ。
　北海道のパウダースノーを味わう資格もない。

　今すぐ荷物をまとめて帰れ。
　大使を辞任しな。

選手としての為末は好きだった。でも、Twitterをつぶやく為末は好きではない。
ぼくから見ると、中途半端で見識が浅いからだ。

でも、このツイートに関しては全面的に賛成だね。
いいこと、正しいことを言っていると思う。

県大会優勝とかじゃなくて、日本のチャンピオンとか、世界でメダルを取るとか、そういう「スポーツのトップレベル」の世界では、本当に才能がものを言う。むしろ、その世界で才能が大きな口を利くようになる。

だから、

「アスリートとして成功するためにはアスリート向きの体で生まれたかどうかが99％重要なことだ」

というのは、本当に正しいことを言っている。

「オリンピック選手になるのは難しく、才能と、環境がまず重要で、それが努力よりも先にくる」

というのも、同じことを言っている。
オリンピック選手になるっていうのは、その国のほんとトップになるってことだからね。

資本主義＝近代国家は、国民の労働力を有効に、そして最大限に駆使するために「努力神話」というものをこしらえた。「勤労神話」と言ってもいいかな。

努力すれば報われる。
努力すれば夢が叶う。

それを叶える設計を持った国家が、特に戦後の民主主義国家だった。それがアメリカンドリームのアメリカであり、高度経済成長期の日本だった。

だが、90年代に入って、国家はそのようなプランを維持できなくなってしまった。と同時に、「努力神話」「勤労神話」の金箔が剥がれてきた。剥がれてきた世界でどう生きるか、自分を損傷させずに切り換えて生きていくか。そのことに対して、為末氏は言っている。

「人生の前半は努力すれば夢は叶うということでいいと思うが、どこかのタイミングで自分を客観視しなければ人生が辛くなる。なぜかというと、努力しても夢が叶わなかった場合は自分の努力不足だと思ってしまうからだ。 だから、努力原理主義を抜けられなかった人は、こんな自分を許せなくて 何かを呪って生きていくことになる。 そして、人間の能力はそれぞれだから一つの事に縛られるなんてもったいない」

これは至言だ。
でも、炎上してしまった。なぜか。

日本人が戦後教育によって「不平等」や「不公平」というものに対してことさら文句を言う種族になってしまったからだ。

才能における不平等。不公平。
じゃあ、おれは普通の人間ってことかよ。不平等じゃねえかよ。不公平だろ。

同じような理屈で、１月４日のグリーン車のツイートも炎上した。
抜け駆けする者がいることに対する恨み。不平等感、不公平感。

それが、この国では強すぎるのだ。
スポーツのトップレベルの世界（オリンピック代表レベル）では、才能と環境で決まるという事実は、才能において抜け駆けするやつがいるということなのだ。そんな不公平なこと、不平等なことは許せない。で、炎上。

なんとも稚拙である。
そんなところで噛みつくようなメンタルレベルでは、どんな世界でもトップレベルにはならんよね。

話題を元に戻そう。
才能の話である。為末氏のツイートを見て、では、クリエイターの場合はどうなのだろうかとぼくは考えた。

作家というもの。あるいはゲームクリエイターというもの。トップの作家やトップのクリエイターには、才能が最も重要なのだろうか。才能と環境こそが優先されるのだろうか。

ぼくはそうは考えていない。
まずほとんどの人は、才能がある段階には達していない。ある一定以上の技術レベルを持っていれば、プロにはなれる。才能があるからプロになるわけではない。

問題はそこからである。
どれだけ脳のリソースを培い、技術を養い、才能をつくることができた者だけが、トップレベルに行けるのだとぼくは思っている。そしてそこにたどり着ける者は、おのずと限定されることになる。

プロセスは違うが、誰もがトップレベルの作家やトップレベルのクリエイターになれるわけではない。