ものごとを解決するのは、名詞でも形容詞でもない。動詞である。観念ではなく、具体的な行動である。
　実は、彼女と別れそうになったことがある。
　原因はもう覚えていない。いろんなことが重なって、ふいに愛情レベルが下がった。一緒にいても、相手のことをかわいいと思えなくなってしまったのだ。
　勿論、ルックスの問題ではない。自分は面食いである。
　愛そうと思ったが、まるで愛情が湧いてこない。会っても楽しくない。一緒にいても愛しさを感じない。
　もうダメだと思った。嘘はつけない。ある年の9月、川崎の喫茶店で、彼女に愛情レベルが低下したことを告げた。
「どうしたいの？」
「別れたいの？」
　訊かれて、わからないと答えた。
　別れたいと言えば、間違いなく別れていただろう。自分自身は別れてもいいと思っていたが、別れると言ってはいけない気もした。破れかぶれだったのかもしれない。あるいは、別れを言い出すのが怖かったのかもしれない。別れてしまえば、そのショックでものが書けなくなるのは見えていた。
　ハードランディング（今すぐ別れる）か、ソフトランディング（別れる時期を延ばす）か。
　だが、そこで彼女が折れた。自分が要求した条件に応じてくれたのだ。
　まず、ひとつつながった。ハードランディングではなく、ソフトランディングになった。
　でも、未来に対する希望は懐けなかった。とりあえず関係がつながっただけであって、いずれ消滅するのは目に見えている。もって１年ぐらいだろうと思っていた。１年ぐらいしたら、二人の縁が切れて自然消滅するか、やっぱり関係を続けられないってことになって別れを切り出すか、どちらかだろうと思っていた。
　何もしなければ、多分そうなっていたと思う。正直、切なかった。別れるだろうなと思いながら付き合うのは淋しかった。
　でも、その時に思ったのだ。
　たとえ１年後に別れることになっていてもいい。それならその１年、彼女とちゃんと思い出を作ろう。いろんなところにも行って、美味しいものも食べて、二人で愉しもう。消滅する運命だからといって何も思い出を作りに行かないのは怠慢だ。それにそんな付き合い方をしたら、次に別の子と付き合う時にもつながらないし、そもそも彼氏として不誠実ではないか。
　そう思って、前年より明らかに何度も、美味しいと評判のお店に出かけてみたり、二人で日帰りの旅行をしたりしてみた。
　気がつくと、愛情が戻っていた。相手のことをたまらなく愛しく感じるようになっていた。
　恋愛は、ギブ・アンド・テイク。与えよ、さらば手に入らん。
　１年前に比して明らかに、いろんなところに行ったりご飯を食べたりするという具体的な行動で、自分は相手に愛情を与えることになった。それは相手に伝わり、相手もうれしくて愛情を返してくれた。その返ってきた愛情が、自分の中に、相手への愛情を呼び覚ましたのだ。
　恋愛的循環。ギブ・アンド・テイクがつくった、愛情の循環。
　ああ、ものごとを解決するのは動詞なのだと思った。勿論、すべてのカップルにこの処方箋が当てはまるわけではない。恋愛はケースバイケース、人それぞれであり、それぞれにヒットする処方箋は違う。
　でも、共通しているのは、最初に「テイク」ありきではなく、最初に「ギブ」ありきということだ。自分の愛情が低下してしまったのも、もしかすると、ギブを忘れてテイクばかり目が行くようになっていたからかもしれない。
　不満が多い時はテイクばかり考えている時だ。そういう時には、ギブから出直すのが一番なのだと思う。

激しく同意いたします。

　恋愛のみなならず仕事にも当てはまると思います。
　本当はいけないのでしょうが接客業やっている自分もお客さんによって間違いなくサービスの質を変えています。（謝）
　お客様は神様ばかりでは今はないです。（悲）
　確かに私たちの生活はお客様からの支出から成り立っているのですが、「ふざけんな貴様！！」と思わず思ってしまうお客もどうしても居てしまうのです。（怒）
　大半の方はそうでもないのですが、ごく一部にそういう人が居るのです。（悲）
　そういうこともあるので、他のサービス業の所（特に飲食関係のところ）では物凄く愛想良くしています。
　自分が気持ち良く良く食事するには、お店の方にもある程度気持ちよく食事できる環境を作ってもらえるとすごく違ってくるからです。　自分の場合単純なので「今日は、いつもより早いですね」とか「いつもご利用いただきましてありがとうございます」という一言を言ってもらえるだけで、ここにきて良かったと思えてしまうのです。
　単純なやつだと笑われる方も居るかもしれませんが、人とのつながりって、そういうところからだと私は思っています。
　掲示板に書き込みしてそれに対するコメントがあった時に、ネット初心者だった頃の感動は今でも忘れておりません。世の中悪意のない人ばかりではないといわれていますが、鏡さんのところにくる方々はそうじゃないと信じたいですし、今までオフ会とかでお会いできた方は鏡さんも含め本当に心優しい、気持ちの良い方々ばかりでした。
　まあ実際に、とろくさいこといってくる輩が居れば鏡さんが切ってしまうでしょうが・・・。（笑）
　接客業の愚痴をコメントしてしまいましたが、我々も人間です、若干でも愛想良くすれば多少のサービスは得られるかもしれません。一度お試しあれ。

　これまた激しく同意です（笑）。
　お店の人も、一人の「人間」です。だから、一人の「人間」として接すると、丁寧に返してくれる。
　情けは人のためならず、という言葉があります。
　情というのは、他人のためではなく自分のためになるんだよ、という意味ですが、お店の人と接する時でも、同じなんだな、と感じます。クリスマスにオーブンを買ったばかりなので、余計に（笑）。