数年前から、ライトノベルと美少女ゲームの接近は言われてきました。片思いではなく、両思い的な接近。ライトノベルが美少女ゲームに接近し、美少女ゲームがライトノベルに接近する。ライトノベルへの接近の一番いい例は、ニトロプラスやtype-moonでしょう。従来、美少女ゲームの中心的位置を占めてきた恋愛系に変わって台頭してきた、ストーリー系。現在、美少女ゲームは「プレイする」というより「物語をパソコン画面上で見る」ものに変わりつつあります。敢えて皮肉な名付け方をすれば、「ライトゲーム」です。
　ゲームは見るものではなくプレイするもの、インタラクティブ性があってこそゲームとする立場からは、今の美少女ゲームは非常に中途半端な、ライトなゲームが増えています。同時に、ライトノベルの影響を受けた、ライトノベルに近いゲームも増えています。この状況はライトゲーム、すなわち、ライトノベルと美少女ゲームの混合体です。そしてライトノベルの方は、美少女ゲームからベタな恋愛的展開と萌えを吸い取って、萌えノベルと化しつつあります。この状況はまだ１年ほどはつづくでしょうが、２年目に入った頃から別の変化が出てくるのではないかな、と思っています。
　美少女ゲームがライトゲームと化しつつあることに対して、特別な批判意識はありません。ただ、ライトゲーム一辺倒になってしまうと、多様性を失ってますます美少女ゲーム市場――特にパッケージ市場――は縮小するでしょう。現在は数年前の５～６割ほどに縮小していますが、いまだに淘汰がなされているという感じはありません。むしろ、業界全体がどんどん近視眼的になりつつある感じがします。さらに美少女ゲームのパッケージ市場は、縮小するでしょう。数年前に比べて４割までは落ち込むのではないかな、と思います。多様性を迎えない限り、ほとんどのソフトは大ヒット作を生み出すための肥やしという状況に追い込まれることになるでしょう。