またmixiで１つ問題が起きた。
　愛知県一宮市の保健所職員が、県が食中毒の発表をする前日にmixiでフライング発表をして情報をもらしていたことが判明したのだ。地方公務員法（守秘義務）違反の可能性があるとして処分が検討されているという。
　30歳の年齢で……と思う人もいるだろう。ネットでトラブル起こす人って、何か30代の人って多いねと感じる人もいるだろう。彼女のマイミクは33人。33人の友人にしか見られない設定だったので、「仲間うちで見せあうだけの感覚で」書き込んだとのことだが、この感覚は彼女だけのものではあるまい。彼女が陥った錯誤の中には、「ネット上の日記」というものに対する一般の人々の勘違いが含まれている。
　勘違いしている人が多いが、ネットに記されたものはすべて「公開」されたものである。たとえ、blogでなくても、人数限定のSNSでも、それを自分以外の人間が簡単に見ることができるようになっている時点で、公開である。「友達以外には非公開」とシステムが明記していても、それは「友達には公開」ということであって、非公開ということにはならない。やはり、公開である。
　完全なる非公開とは、自分以外の人間が容易にアクセスできないということだ。それは、ネット上にはほとんど存在しない。完全非公開を保つためにば完全にクローズドのシステムで書くしかない。ウイルスに感染する可能性のあるパソコンで書くのは、御法度。その人の自宅から奪わない限り見られないノートを使って、ペンで記すしかない。
　mixiでは、一応本人がいろんなことを書き込むところは「日記」ということになっている。その「日記」という言葉に踊らされて、「日記だし友達限定だし、秘密のことを書いてもいっか……」という感じなのだろうが、日記の日記性たる部分、すなわち「本人以外非公開」という部分は、ペンでノートを使うというスタイルからパソコンでネット上に書き込むというスタイルに変更した瞬間、失われてしまう。そして、公開の真っ只中にさらけだされてしまう。
　古代中国の文筆家、韓愈は、知っていることをどうするかが難しいと看破した。その困難さは、ネット時代の現代、為政者のものではなく普通に生きる民間の人々にも迫っている。ネット上に何かを記すということは、基本的に他人にそれをばらして他人にばらまかれる可能性にさらしているのだという意識が、ネットで書く人間には必要だろう。その意識が持てない人間は、紙とペンに戻るのが一番いい。それをしている限り、トラブルは起きないのだから。