山猫亭といっても、もちろん、猫のお屋敷ではない。
　諏訪のおそば屋、山猫亭。
　ご当地では非常に人気のある名物そば屋だが、それが東京に上陸したのだ。今日がオープン初日ということなので、赤坂見附まで出かけてきた。
　地下鉄赤坂見附駅を下りて、左手に東急を見ながら、大きな通りを歩いていく。左手に日吉神社の大きな鳥居が見えてきたら、右折ポイントはすぐ近くだ。三井住友銀行の建物をすぎたところで、右の小路に入ればよい。
　途中、小さな通りと２度交わるが、そのまま直進。２度目が来たら山猫亭だ。２つめの通りと交わる交差点を渡った右。その地下に山猫亭はある。
　お邪魔したのは、冬の午後５時半。
　黒が基調の店内は、椅子の背もたれだけが白くて落ち着いた感じ。肩の凝らない大人の空間という感じだ。
　早速、お薦めのおろし蕎麦を注文。
　広めの丼に盛られた、お汁に浸かった細麺のお蕎麦。その上に冠雪みたいに載せられたおろしに、思わず箸を割る。どんな味かな……と口に運ぶと、シャキシャキした食感とともにスキッとした味わい。せいろうなんかを注文すると、途中でズドンとお腹に来たりするものだけれど、まるでそんな感じがない。するすると食べてしまって、ししとうペペロンチーノを注文した。ちりめんじゃこといっしょに輪切りの唐がらしでししとうを炒めたものだが、ぴりっと来る辛さ加減に、ますますお腹が空いてしまう。
　メニューを見て、まぐろづけ丼を追加注文した。しばらくして出てきたのは、懐の深い、お茶碗みたいな小丼に、控えめに盛られたご飯と丁寧に並べられたづけまぐろ。ちょうどいい塩加減にツルツルと食べてしまって、さらに天つっこみ丼を注文。
　やがて現れた天つっこみ丼に、デジカメを持ってこなかったことを後悔した。５種類の天麩羅が、まるで舞台でお芝居をする役者のようにお碗から華やかにはみ出している。 主役はおれたちだとばかりにお碗から立ち上がって、まるで両腕を広げているよう。底にあるご飯を掬おうにも、えびやカボチャの天麩羅が行く手を塞いでうまく掬えない。
　塩とタレの両方を天麩羅にかけて、ひとつひとつ口に運んだ。これで５００円は贅沢だ。蕎麦１つに小丼２杯と食べたので、さすがにお腹いっぱい。
　行ったのは夕方からだったけど、赤坂見附という場所を忘れるくらい、肩も凝らず、ゆったりとくつろげた。個人的にお酒が弱いので注文しなかったけれど、日本酒三種の利き酒メニューも用意されているとのこと。いいところに、いいお店ができたものだ。

・今日の食事
　おろし蕎麦　1000円
　天つっこみ丼　500円
　まぐろづけ丼　400円
　ししとうペペロンチーノ　400円
　烏龍茶　300円
　黒烏龍茶　400円

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