奇跡は本来つづかない。
　２度起こせば、たいてい甲子園では奇跡は尽きてベスト４で止まる。
　だが、佐賀北の奇跡は止まらなかった。最後の最後まで、奇跡はつづいた。逆転満塁ホームランは、その最後の奇跡だった。甲子園史上で恐らく最も激暑の中で行われた甲子園は、県立佐賀北高校の優勝で幕を閉じた。
　よく、スポーツは筋書きのないドラマだと言われる。だが、本当に筋書きがないわけではない。人間が書いた筋書きはなくても、神様が書いた筋書きならば、ある。
　ベスト８が出揃った段階で、優勝するのは九州の学校か、帝京か、広陵だろうと踏んでいた。春夏連覇はないだろうと読んでいた。そのときにはまだ神の筋書きはぼんやりとしか見えなかったのだが、佐賀北が長崎日大を破った瞬間に、はっきりと神の意図が見えていた。
　今年は私立には優勝させない。特待生問題でごたごたのあった私立には花をもたせない。比較的関係の少なかった公立に花をもたせる。
　その意図が見えたのだ。そして、佐賀北は優勝した。
　佐賀北の優勝が神様の筋書きによるものだと言いたいわけではない。いくら筋書きがあるといっても、公立校ならどこでも勝てたわけではない。佐賀北ナインの心技体がなければ、優勝は成し遂げられなかっただろう。
　だが、普通は奇跡はつづかないのだ。でも、今年だけは奇跡は何度もくり返した。最後の最後でも奇跡は起こった。そこに、私立には優勝させず公立に優勝させようという神の意図を感じるのである。
　甲子園には神の意図がある。今年はこれでいくからね、という神の意図、神の演出がある。それを読めれば、優勝校を予想することができる。
　来年はどんな意図がなされるのか。非常に楽しみだ。