如月群真と書いて、きさらぎ・ぐんまと読む。ごめんなさい、ぐんしんと読んでました。
　如月群真の初単行本『Love Selection』を紹介するのは、いまさらの感ではある。１年以上前に出た本である。けれども、きたるべき8月18日に２冊めの単行本が出る今こそ、なのだ。


　如月群真の描く学園乱交ものには、奇妙な明るさと淫靡さがある。ご都合主義とは、本来真正面から向き合ってかたづけるべきストーリー上の問題をジャンルの力学によって適当にごまかしてしまうことだが、『Love Selection』にはそのようなご都合主義がない。
　たとえば、メイド喫茶の話がある。通いつめた常連さんにはスペシャルサービスデーが用意されていて、その日は巨乳メイドを好き放題に揉みまくり、フェラチオさせ、突きまくることができるのだ。
　なぜ？　エロ漫画だから？
　そういうジャンルによる説明は一切ない。そうなったらいいなあ……という主人公のファンタジーはない。世界はすべからく欲望にしたがってつくられている。世界はすべて欲望にしたがって配置され、構成されている。まるでそう主張するかのように他の客たちはセックスに突進し、そして主人公もまた、ヒロインたちとのセックスに突き進んでいくのだ。
　はじめにエロありき、という態度ではない。世界は欲望なり、欲望は世界なり。そのテーゼを具現化した中、乱交が始まるのである。
　まさに、如月群真的ワールドというべき、欲望的世界観。エロ漫画だからそうなるのではない。世界は欲望だから、欲望こそ世界の姿であるからそうなるのだ、という強力な、世界宗教のようなテーゼ。
　一人の読者ではなく、一人のプロの魂を刺激し、魂を揺さぶる作品である。おまけにオッパイ星人にとってうれしいことに、巨乳爆乳キャラが出てくると、しっかり揉みまくってパイズリしてくれるのだ。帰る場所を見つけたアムロ・レイより幸せな気分である。
　２年間で書きためた原稿を収録したという性格上、絵柄のばらつきがあるという批判もある。だが、鏡は気にならなかった。たとえ絵柄にばらつきがあったとしても、エロティシズムにばらつきはなかったからだ。
　8月18日に期待の第２作が出るとのことだが、実に楽しみで仕方ない。きっとそこにも、群真ワールドは存在しているだろうから。
Love selection