人生は重力の増加に似ている。挫折の時、敗北の時、重力は極端に増加する。その瞬間、人は後悔するのだ。あの時ああしておけば、もっと重力は低くなっていたのではないか、軽かったのではないか、と。
　しかし、人生は重力の増加である。増えるのが常であり、減ることはない。歳を重ねるごとにどんどん重力は増えていく。重力を回避しようとするより、重力と戯れること、重力を楽しむことの方が心地いい。
　重力を楽しむためには、マジメになりすぎないことである。人間の背骨は重力や体重に負けないようにＳ字カーブを描いている。まっすぐになると体重が一気にかかって痛める。
　精神の態度も同じである。マジメになりすぎるということは、心の背骨がまっすぐになってＳ字カーブを失うということだ。当然、重力が一気にかかって精神が壊れてしまう。
　楽しむということ、マジメになりすぎないということは、心にＳ字カーブをもたせるということだ。
　マジメになりすぎないこと。いかに重力を回避するかではなく、いかに重力を楽しむかということ。挫折と敗北を乗り越えることに楽しみを懐くこと。その楽しみを心の底から味わい尽くした瞬間、人は心だけは無重力になれるのだろう。