原題は、『PASQUALINO SETTEBELLEZZE』。
　邦題、セブン・ビューティーズ。
　先に断っておくが、タイトルと中身は、まったく合っていない。セブン・ビューティーズと言われると、アメリカお得意の、まだ売れてない女優が７人出てきてひたすらお色気を振りまく物語のように思えるが、逆ベクトルの、アンチお色気なお話。女の裸は出てくるが、美的なものとしてではなく、醜い形としてである。
　監督はリナ・ウォルトミューラー。
　『流されて』『流されて２』といった作品がある。

　『セブン・ビューティーズ』の主人公は、７人の妹を持つイタリア人、パスカリーノだ。
　町を歩けば女が色目を向ける伊達男という設定だが、内面性は伊達男というよりは間抜けな最低男に近い。　妹の１人をたぶらかせるワルにいちゃもんをつけに行って、逆にのされてしまったパスカリーノは、夜中、男の部屋に忍び込む。ピストルを突きつけて、「丸腰を相手に殺すわけにはいかない、早く銃をとれ」と言うのだが、そう言っているうちに間違って引き金を引いてしまう。
　裁判の結果、精神病院に送られたパスカリーノは、そこで女性患者を強姦。厳しい咎を受ける。拘束具にがんじがらめにされたパスカリーノは、その境遇から逃れるため、軍隊に志願。
　だが、軍隊を脱走して、ライン川付近でドイツ軍に捕まってしまう。送られた刑務所では、定期的に何人かが引っ張られ、銃殺されていた。「死にたくない！」と一念発起したパスカリーノは、自分に学はないが女なら知っていると、女刑務所所長の気を引く作戦に出る。
　成功して女所長と二人きりになるが、ぶとぶとに太った裸を曝け出した女所長相手の一戦目は、空腹で敗北。二戦目でなんとか務めを果たすが、そこである役を任命されてしまう。自分の班から、処刑される６人を選び出せと言うのだ。できなければ、おまえの班は全員処刑だという。
　仲間２人（老人ともう１人）は止めるように説得するが、パスカリーノは６人をリストアップ。引きずられていく６人を見た老人は、とうとうたまらず、狂気を装って肥だめに飛び込んで死亡。もう１人も、「もうたくさんだ！」と叫び出して騒いでしまう。
　止めようとしたパスカリーノに刑務所から手渡されたのは、一丁のピストルだった。

「撃ち殺せ」

　戦争が始まる前は、望んだタイミングではなかったが望んだ相手に望んだ形で人に拳銃を向けたパスカリーノ。そのパスカリーノが、今度は、望まざる形で望まざる相手に拳銃を持たされている。
　泣きそうになるパスカリーノに、仲間の男は懇願する。
「頼む、殺してくれ。もう生きたくない」
「どうせ死ぬのなら、おまえに殺された方がいい」
　そして、パスカリーノは引き金を引くのだ。
　戦争が終わって帰って来たパスカリーノは、自分の妹たちが全員娼婦に陥っていることを知る。そして、自分に好意を懐いていた女も。だが、パスカリーノは咎めることもせず、その女との結婚を決意するのだった……。
　『セブン・ビューティーズ』に描かれているのは、いわゆる高い人間性を持った人間ではない。むしろ、人としては屑と言われるような、自分が生きるためにはなんでもしてしまう男の姿である。しかし、そういう人間であっても味わう苦痛と切なさを、批判することなく悲哀と愛情をもって描いていくのだ。
　なんとも、奇妙な味わいと哀愁のある映画である。残念なのは、この映画がまだＤＶＤ化されていないことだ。レンタルショップでも見ることは難しいかもしれない。