情報的に言うと、子供と大人の差ははっきりしている。社会への情報量だ。学校社会についての情報量ではない。それよりもっと広い世界である、「社会」に対しての情報量である。
　子供というのは、狭い学校世界の中で生きていて、社会を知らない。自分たちがいかに社会の害悪に触れないようにコーティングされているか、親や教師によって守られているか、学校世界という無菌室のような空間で培養されているかを知らない。
　これはいたしかたないことだ。学校空間とは、均質な空間だからである。学校世界には、同級生と先生と親しかいない。先輩だって後輩だっているが、基本的には自分たちと同世代である。自分たちが幼い頃に放映されていたフィクションはみんな知っているし、同じ地域に住んでいるのでお店や地区の固有名は、たいていは知っている。言ってみれば、ひとつのアリンコの巣穴でだけ暮らしているような世界だ。
　しかし、社会はたったひとつのアリンコの巣穴ではない。自分と同種類の人間だけがいる世界でも、同世代だけがいる世界ではない。違う世代の方が多い世界である。出身地域も、所得も、全然違う人間たちがうようよしている世界なのである。社会は、アリンコの巣穴ではなく、もっと広い、自然全体なのだ。そこにはアリンコを捕食する動物や昆虫がうじゃうじゃしているのである。
　社会は均質な無菌空間ではない。学校空間にだってワルはいるが、学校世界のワルと社会のワルは違う。誠実の仮面をかぶって人を利用する連中、誘惑していいように弄ぶ連中、鐘を巻き上げる連中などが、社会にはいる。そういうことを、子供たちは知識として持ってはいても、「実感」していない。それを人は世間知らずと言うのであり、子供と言うのだ。
　そして、大切なのは、「だから子供は隔離しなければならない」ということではなく、「だから子供は慣れさせなければならない」ということなのだ。初めて一人でお遣いに行かせたように、初めて一人だけで電車に乗せたように、「どの段階で」「慣れさせていくか」が大切なのだ。隔離しすぎると、社会の菌に対して抵抗力のない人間になってしまう。そういう人間はもはや使い物にならない。そうならないようにも、「どう慣れさせていくか」が重要なのだ。

こんばんは。記事を読んで耳の痛い話だと思いました。
社会の中で生きていくには社会に慣れるしかないですね。
長い間社会と関わらない生活をしてきたので、記事を読みながら、その通りだなと思いました。

引きこもりをはじめ社会に出るのが怖い人は、人間や失敗する事が怖いのだと思います。
ひどい事をされると人が怖くなってしまう。
無菌空間に長くいると外に出るのが怖くなるんでしょうね。

「トレイントレイン」の
「ここは天国じゃないんだ。かと言って地獄でもない。いい奴ばかりじゃないけど、悪い奴ばかりでもない。」
という歌詞を思い出しました。

社会にはいい人も悪い人もいるのでしょうね。
私は大抵の人は善人でも悪人でもないと信じています。

社会に出ない人は何が怖くて出ないのでしょうか。
家の中の方が、無菌空間の方が居心地がいいのでしょうか。
何年も家にいた人間にとっては、家の中に独りでいても楽しくないですけど。
気楽かもしれないけど、独りでいても楽しくないですよ。

初めまして、名無し人と申します。

>初心者
引きこもりに限定するのはちょっとどうかと思いますよ。
引きこもりされている方にはそれなりの事情があるわけで、
「抵抗力がない」の一言だけで解決する問題じゃないはずです。

自分はちょうど成人になる年代ですが、
バイト先で年下の新入りに対して「こいつ根性が足りないな」と感じるときがよくあります。
何人もの新入りが、教育係の先輩に多少怒られただけですぐにへこたれてバイトを辞めていくのです。
僕も同じように怒られる経験をしましたが（むしろ彼らより多いと思います（汗））、
大人になっていく上でこれくらいの指導に耐えるのは当たり前。
辞めるなんて思考は全く浮かびませんでした。

鏡氏のいう「抵抗力のない人間」は、初心者さんのおっしゃる方々よりも、むしろこういった根性のない人に当てはめた方が良いと思います。

名無し人さんの「引きこもりに限定するのはちょっとどうかと思いますよ。」というご意見に対しては、
その通りだと思います。
（コメント欄で他の方のコメントに回答してはダメですか。すみません。）

　他の方へのコメントはＯＫです。ただ、相手の感情を害さないように、配慮はしてやってください。

　学校世界＝無菌世界、社会＝菌のいる世界です。鏡の言う「抵抗力のない人間」とは、社会に対して抵抗力のない人間を意味します。

　社会の菌とは、単純に社会に潜む害悪も含みますし、また害悪以外にも、社会が持っている、学校世界とは違う厳しい側面も含んでいます。

　そういう部分に対して抵抗力のない人間──学校世界の均質空間とはルールも感触も違う世界に対して対応できず、すぐ切れたりあるいはへたれたりする人間を意味しています。

　引きこもりがそれに当てはまるなら引きこもりに引き寄せて語ることもできるでしょうし、根性なしがそれに当てはまるなら根性なしに引き寄せて語ることもできるでしょう。