本当に好きで好きでしょうがなくてくっついたカップルをのぞいて、ほとんどのカップルの基層には、利害関係が横たわっている。
　男の本当の狙いは「最高の女」である。だが、最高の女はめったには現れない。だから、いくつか折り合いをつけることになる。
　女にも、理想の男はいる。でも、なかなか現れないから、たいていは折り合いをつけることになる。足し算と引き算をくり返しながらこの相手に食べられてもいいのか値踏みをする。一種の打算だ。
　好きで好きでしょうがなくて付き合いはじめた、という少数の幸福なカップルをのぞいて、多くのカップルは、始まりに打算がある。つまり、利害関係の上に始まっている。
　ただ、言葉を重ね、思いやりを見せているうちに、だんだんその「利害」や「打算」が埋もれて見えなくなっていくだけにすぎない。言葉や思いやりをもらううちに「この人いいな」「この子いいな」という感情が湧き起こり、やがてそれは「好き」という終着点に辿り着く。
　しかし、その「好き」という感情の底には、利害関係が横たわっているのだ。それは、脆さの証である。ほとんどの男女は決して強い絆で結ばれているわけではなく、恋愛関係というのは、根本的に非常に脆いものなのだ。別れても不思議ではないぐらいの強度しか元々ないのである。
　たとえば、比較のために男性同士の親友というのを考えてみよう。
　親友には、利害関係がない。あいつと付き合ってるとプレステのソフトを貸してもらえるからとか、あいつの家にいいものがあるからとか、そういう利害関係は存在しない。そいつのためなら、なぜか骨身を尽くしてしまう、利害を抜きにして助けてしまったり助けられたりする。そういう関係が、親友である。利害関係がある脆弱な結びつきは「友達」と呼ばれる。
　親友の関係は強固である。絆が深いために、そう壊れることはない。だが、好きで好きでしょうがなくてくっついたカップル以外の恋愛関係は、ほとんどが利害の上に成り立っている。
　親友関係は、距離が離れても壊れない。帰省すれば再会する。だが、友人関係は、学校が変わったり物理的な距離が離れたりすると、途端に疎遠になっていく。そして、恋愛関係も同じである。利害の上に成り立っているから、物理的な距離に左右される。
　恋愛関係は、決して強固なものではない。好きという感情、二人の思い出は美しいものだけれど、その基層には、ほとんどの場合、利害関係がある。利害関係がある以上は、結びつきや絆は弱いと言わざるをえない。
　鏡は悲観論者でもないし、恋愛関係はすべて汚いものだと言っているわけではない。ただ、基層に利害関係が横たわっていると指摘したいだけだ。多くの人は恋愛関係を神秘化しようとしているようだけれども──別の神秘性は存在するけれど──ほとんどの男女関係は根本的に脆く、簡単に破綻しうるものなのだ。

私は、人間関係は利害関係だと思います。そして、それは悪い事ではない。

きれいな言葉で言えば、「お互いに与え合う」という事。

ただ、利害とか打算という言葉は、お金だけを指すんじゃないと思う。
賞賛や、心の安定を得るために、人との触れ合いを求めることもあると思う。

　世の中にはいやな人もいるので、与えるということはまったく考えず、いかにもらうかというこ
とに心を砕いている人もいます。
　
　人間関係というのは、ひとつの贈与です。どれだけ贈り物をして、どれだけ見返りがもらえる
か。言い方は汚いけれども、そういうことになります。
　でも、その「あげる－もらう」あるいは「もらう－あげる」という交換のなかで、感情が生まれ
てゆく。絆の幻想も生まれてゆきます。

　交換は、単なる金銭にとどまりません。思いやりもそう。電話やメールといった言葉もそうで
す。礼儀や挨拶もそう。それもまた、与えるもの、あるいはもらうものです。

　鏡さん、こんにちは。


　高校ぐらいのとき友達の話を聞いていると、親友を軽く、彼女を重く見ているように感じていました。当時は漠然とそれは違うんじゃないかと思っていただけなのでちゃんと説明できそうになく、そのことを話しても理解してもらえそうになかったので（むしろ気持ち悪がられるような気さえして）人に話したことはありませんでしたし、深く考えることもしませんでした。
　このコラムを読んでそれは違うと思った理由が少し見えました。
　伊達にとっては親友も恋人も同じくらい大事な存在で、伊達にとって親友と彼女の違いはポジション（というか役割というか）が違うだけではないかと。
　漠然としたイメージなので、分かりにくいかも知れませんが、恋人は寄り添っていて、親友が少し間を空けて向きあって居るような。
　恋人との距離は近くなりやすいのでその分どうしても彼女のほうが比率が大きくなってしまいますが、伊達は
どちらも同じくらい大事に接したいと思っているのではないかと。

　
　それでは失礼いたします。

　彼女といっても、いくつかある。

（１）好きで好きでしょうがなくて、利害関係抜きでくっついた関係。これは親友に近い。
（２）交換を重ねているうちに好きになって、利害の上に恋愛感情を上乗せする形で出来上がった関係。
（３）彼氏彼女がいないと恰好悪いからとくっついた、軽薄な利害関係。

　どれに当てはまるかによって、論じ方が違う。
　伊達さんがどれかはわからないけれど、共通していることが少しある。（１）も（２）も、ポジ
ション的には１番にのしあがるってことです。
　彼氏／彼女というのは、苦しいことも悲しいことも嬉しいことも「一番最初」に伝えてくれる、
あるいは相談してくれる相手としてポジション・アップするんです。だから、引っ越しを勝手に決
めてしまうと、彼女に怒られたりする。

　高校ぐらいの時に伊達さんの友達が親友を軽く、彼女を重く見ていたのは、単純にそのポジショ
ンの部分だけを見て判断していたからでしょう。

　関係性の強度という観点で見ると、彼氏－彼女の関係は、決して親友を上回るとは限らんので
す。むしろ、たいていは下回るといった方がいいでしょう。　　

こんばんは、鏡さん。
こんな事をここに書いて良いのか分かりませんが、
書かせて下さい。

実は人に変なメールを送った後で、お詫びのメールを送るべきか否か、迷います。

何通もメールを送るほうが、却って迷惑になる気がする。

メール送った後で、
何であんな物を送信したんだろうと思うことが、良くあります。

時々自分のストレス発散のために、メールを送ってることがある。
相手が忙しいのを分かっていながら・・・。

自分の心が不安定になると、なんか寂しさを紛らわすためなのか、たわいも無いメールを送ってしまう。

なんか、たわいも無い書き込みをしてしまったかも。
それでは、この辺で。

　あなたの思考は自分のなかに閉じこもっている。
　「相手が迷惑なんじゃないか」「しかし、さらにメールを送ったらもっと迷惑なんじゃないか」
というのは、あくまでも「あなた」がそう考えていることであって、実際にそうだったとはあなた
は書いていない。
　あなたは、そのメールを送った相手と直接そのことについて話をしたのだろうか。恐らくこわが
って振れていないのではないだろうか。

　あなたは、自分で想定して自分でひとり相撲をとっているように思える。
　ほんとうに他人の視点があなたのなかにあるのだろうか？　あなたが「他人が……」と口にする
時の他人は、あなた自身の自意識ではないだろうか。

　初心者さんは、まだうまく社会と接点をもてないように感じる。
　社会との接触量が少ないというか、他人というもの、社会というものと充分に接触していない感
じがする。

　他人は自分が思うほど、自分を気にしないものです。
　好きでもない限り、その人のことをいちいち覚えていません。この大衆社会のなかでは、人は匿
名性のなかに生きているようなもので、ほとんどの人は他人から注目もされないし、記憶されても
いない。

　初心者さんは中途半端に「いい人」を目指しているんじゃないかな。
　人に迷惑かけたくない、嫌われたくない、いい人でいたい……と八方美人的になっているんじゃ
ないかな。

　でも、あなたのメンタリティや今の器では、いい人を実現するのは難しいでしょう。
　そもそも、迷惑をかけずに生きるとか、嫌われずにいるとかいうのが無理なのです。

　人はどこかで必ず他人に迷惑をかけて生きる者。
　誰かに嫌われる者。

　どんなに注意してたって、自分を嫌う者はいる。
　知らずに迷惑をかけることがある。

　殺生をせずして生きることが不可能であるように、迷惑をかけずに生きることもまた不可能です。
　生きても迷惑をかけるし、死んでも迷惑をかける。
　どっちに転んでも必ず迷惑をかける。そういう宿命から逃れようとしても、無駄です。

　そのあたり、もっと開き直った方がよろしい。
　迷惑をかけること、嫌われることを恐れぬように。

　鏡だって、いろんな人に迷惑をかけている。
　情緒不安になって、仲良しの人妻に電話をかけて、貴重な昼の２、３時間を奪ったりしている。
　未練を断ち切れずにメールを送って不愉快な思いをさせたりしたこともある。
　鏡を嫌っている人は、恐らく最低でも１０人はいるだろう。

　だが、鏡はそんなことは気にしない。
　「迷惑をかけてしまったかも……」とブルーになるそのいやな気分を逆に楽しんでいるところもある。

　１０人に迷惑をかけて生きているのなら、誰か１人を助けてやればよろしい。
　１人に嫌われているのならば、誰か１人を好きになってやればよろしい。

　嫌われたって、迷惑をかけていやに思われたって、命まではとられんよ。

＞ほんとうに他人の視点があなたのなかにあるのだろうか？
＞あなたが「他人が……」と口にする時の他人は、あなた自身の自意識ではないだろうか。

そうだと思います。どんなに頑張っても、他人が何を考えてるかは分からない。
自分の物差しを基準に、他人の気持ちを推測することしか出来ない。

＞好きでもない限り、その人のことをいちいち覚えていません。

私は、人の事をいちいち覚えてるんです。
だから、他人も私と同じように、人の事を覚えてるような気がして仕方が無いんです。
実際、私の友達はとても記憶力が良くて、何年経っても私がした失敗とか覚えてます。

＞迷惑をかけること、嫌われることを恐れぬように。

自分にそう言い聞かせなきゃ、いけないと思います。
昔から、人に好きになってもらいたいとは、思っていない。
自分が、人から好かれる人間だとは思ってない。
ただ、嫌われたくないだけ。でも、それも無理。分かってるつもりなのに。

でも、内心では好かれたいんですよ、たぶん。
だから、他人が私をどう思ってるかが気になるんですよ。

でも、「私のこと迷惑ですか」と聞いても仕方がない。
内心では迷惑だと思ってても本音を言う人は少ない。
相手から「はい、迷惑です」と言われれば、傷つくだけ。

一人で悶々と考えても仕方がないのにね。
だから、何とか前向きな事を考えるように努力します、なんとか。

他人からこう思われたいなっていう自己イメージが強すぎると、自分を苦しめるよ。
失敗を覚えられてたっていいんです。

鏡なんか、チャックを開けて会社まで行ったことがあります。
でも、それで誰かのネタになって誰かに笑ってもらえるのなら、それでいいと思ってる。

誰かから嫌われる？
上等！　それでいいじゃない。

人間ね、嫌われたっていいんです。
鏡のことを嫌いな人間はいっぱいいます。最低１０人はいるね（笑）。

でも、だからこそ、好きでいてくれる人がいる。
人生を生きるということは、ある意味、誰かに嫌われ、誰かに好かれるということです。

誰にも嫌われずにいるというのは無理なこと。
空中を歩くようなもの。

好かれたいと思うのなら、嫌われてもいいと思うこと。
みんなに嫌われたくないと思っちゃうと、自分を苦しめるだけ。

誰にも嫌われないというのは、存在しないのと同じこと。
誰にも嫌われずに誰かに好かれるということはないんです。

みんなに嫌われるよりも、誰か一人に嫌われて誰か一人に好かれる方がずっとステキなことです。
誰にも嫌われないよりも、誰か１人でも好かれる方がずっと崇高だぜ。