昨日、編集さんから『ブラバスター６』の校正原稿が到着。ついに字雕句琢、点鉄成金の時が開始。

　けなすために書くのではない。期待のため、董狐の筆に倣って書くのだ。
　青木りんのデビューＡＶ『現役アイドルギリギリモザイク』を見た。結果から言えば、抜けなかった。抜こうと努力してみたが、抜かせてもらえなかったというところが正しいところか。
　売れるか売れないかでいえば、売れるだろう。「引退アイドル」ではなく「現役アイドル」としての初のＡＶ挑戦。それだけで傑出した商品力になる。だが、そこにあったのは、アイドルとしての青木りんではなく、ただのＫカップの女だった。「性行為」はあったが、「エロティシズム」はなかった。一人の女の子をハメた。ただそれだけの内容だ。お決まりの前戯からお決まりの挿入、そして射精へのルーティーンには勃起も興奮もなかった。
　性行為を成せば、自動的にエロティシズムが生まれるわけではない。性行為がなくともエロティシズムが生まれることは、『ＥＩＧＨＴ』が証明している。バタイユも、性行為にエロティシズムが宿るとは言っていない。だが、そのことを理解しているＡＶ制作者たちは少ないようだ。少なくとも、今回の制作者たちにはわかっているように見えなかった。
　人は、性行為に対して抜くのではない。エロティシズムに対して勃起し、エロティシズムに対して抜く。性行為に反応して抜くのは、中学生ぐらいである。
　そのことを理解していたのは、むしろイメージＤＶＤの制作者の方だった。エロティシズムを理解していたのも、また彼ら非18禁の制作者たちの方だった。性行為のないイメージＤＶＤの制作者の方が、よっぽどエロティシズムを盛り込もうとしている。
　だが、肝心の18禁制作者の方は、まったくエロティシズムを理解していなかった。ファンへの配慮もなかったし、Ｋカップアイドルという意味合いもまったく理解していなかった。対象ユーザーも見えていなければ、マーケットも見えていなかった。ただ、ある女とのハメハメ映像を撮りました、それだけだ。胸への愛撫もおざなり。後背位挿入時、胸を触っているシーンは腕で隠れていて、乳房の愛撫が見えない。そして、これまたよくある赤い縄で胸を縛ってのハメ撮り。女の子を脱がせて割れ目を見せてやってペニスを挿入してハメてやればそれでユーザーはいいんだよ。そんな内容だった。出演者が青木りんというアイドルである必然性は感じられなかった。青木りんだからこうしたという特別な配慮もなかった。青木りんは、主演Ｘという誰にでも置換可能な代入項にすぎなかった。性行為をやってくれるのなら、誰でもよかったのだ。
　いったい、何のための乳房なのだろうか？　何のためのＫカップなのだろうか？　作り手にはどうやら乳房は見えなかったらしい。青木りんのＡＶと聞いて青木りんのファンが何を期待するのだろうか、ということは、制作者たちは何も考えなかったのだろう。青木りんはＫカップ（Ｌカップ）にまで成長した胸とその大胆な魅せ方で売っている。ＤＶＤを見ている子たちは、あの胸を自由にしたいと思っているはずだ。ならば──という合理的な思考は微塵のかけらもなかった。そこには、手抜きをする風俗嬢以下の仕事しか転がっていなかった。制作者たちにとって、青木りんは「女優単体で売り出せる」という程度の意味しかなかったのだ。
　結局、120分の映像が示したのは、作り手の程度の低さだけだ。いかにアイドルＤＶＤ制作者たちがレベルが高く、ＡＶ制作者たちがいかに下品な低レベルをうろついているかということが浮き彫りになっただけだ。
　ただ、誤算も１つあった。
　アイドルとは、偶像である。男が勝手に妄想するイメージを人工的に身にまとった虚像の集合体である。そして、それはイメージＤＶＤの世界にたっぷり濃縮されて振りまかれる。
　過激なイメージＤＶＤの世界でも、青木りんが見せてきたのは虚像としての青木りんだった。特に『ＥＩＧＨＴ』シリーズでは、青木りんは、Ｋカップの爆乳アイドルに対してファンが懐く幻想を演じきっていた。彼女はまさにアイドル──偶像──だった。ファンが思い描く願望という虚像の女神だった。
　だが、ＡＶで見えたのは、素の彼女だった。イメージＤＶＤの製作環境に比べれば貧弱な照明と撮影システムに照らしだされた彼女の喘ぐ姿は、虚像ではない彼女の実像を映し出していた。初めて見た、アイドルでも虚像でもない、アイドルと虚像のベールをはぎ取った、素の青木りんだった。その姿には感動すら覚えたほどだ。
　どの世界に行こうとも、青木りんは青木りんである。自分が一人のファンであることに変わりはない。今回のＤＶＤ以前でも、以後でも、気持ちは変わらない。青木りんに対しては拍手を送りたいと思う。けれども、作り手たちに対しては怒りと殺意しか覚えない。「世界最大級のサプライズ」とパッケージ裏にはあるが、サプライズするのは作り手の低能さに対してだ。青木りんは「全てを脱ぎ捨て」たかもしれないが、作り手たちは何も脱ぎ捨ててはいない。
　今回は青木りんに対しても、青木りんのファンに対しても、ひどく失礼な、下品な１本だった。そして恐らく、次回もそうなるだろう。エロティシズムを理解しない限り──そしてパーツへのフェティシズムを理解しない限り──今後の作品には期待できまい。性行為有りのＤＶＤが、性行為無しのＤＶＤに「抜き」のレベルで負けるとは、それこそ「世界最大級のサプライズ」である。

　情報的に言うと、子供と大人の差ははっきりしている。社会への情報量だ。学校社会についての情報量ではない。それよりもっと広い世界である、「社会」に対しての情報量である。
　子供というのは、狭い学校世界の中で生きていて、社会を知らない。自分たちがいかに社会の害悪に触れないようにコーティングされているか、親や教師によって守られているか、学校世界という無菌室のような空間で培養されているかを知らない。
　これはいたしかたないことだ。学校空間とは、均質な空間だからである。学校世界には、同級生と先生と親しかいない。先輩だって後輩だっているが、基本的には自分たちと同世代である。自分たちが幼い頃に放映されていたフィクションはみんな知っているし、同じ地域に住んでいるのでお店や地区の固有名は、たいていは知っている。言ってみれば、ひとつのアリンコの巣穴でだけ暮らしているような世界だ。
　しかし、社会はたったひとつのアリンコの巣穴ではない。自分と同種類の人間だけがいる世界でも、同世代だけがいる世界ではない。違う世代の方が多い世界である。出身地域も、所得も、全然違う人間たちがうようよしている世界なのである。社会は、アリンコの巣穴ではなく、もっと広い、自然全体なのだ。そこにはアリンコを捕食する動物や昆虫がうじゃうじゃしているのである。
　社会は均質な無菌空間ではない。学校空間にだってワルはいるが、学校世界のワルと社会のワルは違う。誠実の仮面をかぶって人を利用する連中、誘惑していいように弄ぶ連中、鐘を巻き上げる連中などが、社会にはいる。そういうことを、子供たちは知識として持ってはいても、「実感」していない。それを人は世間知らずと言うのであり、子供と言うのだ。
　そして、大切なのは、「だから子供は隔離しなければならない」ということではなく、「だから子供は慣れさせなければならない」ということなのだ。初めて一人でお遣いに行かせたように、初めて一人だけで電車に乗せたように、「どの段階で」「慣れさせていくか」が大切なのだ。隔離しすぎると、社会の菌に対して抵抗力のない人間になってしまう。そういう人間はもはや使い物にならない。そうならないようにも、「どう慣れさせていくか」が重要なのだ。

　「○○になりたいんですけど、どうすれば……」とよく相談事を掲示板に書き込む人がいる。そういう人に対して優しくアドバイスするタイプと、何を甘えたとを言ってるんだと突き放すタイプとがいる。だが、どういう態度をとるにせよ、そのような相談事をする志望者には、根性なしというイメージがつきまとう。プロではなく、アマチュアの人でも、実際にそう感じる人は少なくないだろう。
　根性なしと感じるのは当たり前なのだ。「どうすれば……」と相談する人間は、「手っとり早く○○になる方法」が知りたいだけなのである。
　１日で英語がぺらぺらになる方法を知りたい。１日でモテるようになる方法が知りたい。１日で美人になれる方法が知りたい。１日で作家になれる方法を知りたい。それと同じなのだ。それがわかっているから、「○○になりたいんですけど、どうすればいいんでしょうか」なんて聞いてくる人間に対して、甘ったれるなと怒りを覚えるのである。
　コピーライターの世界は、100個考えついて1個採用される世界だという。また、1個目のコピーと100個目のコピーが一番いいものになるという。2個のいいコピーを思いつくために、98個の無駄玉を打つということだ。元々「手っとり早く」というのがない世界なのである。手っとり早い方法を教えてもらおうと思っている時点で、この世界に来る資格はないということだ。

　巨乳とは、年上の女性にのみ宿る属性なのであろうか？　巨乳＝年上というステレオタイプな図式だけが存在を許されているのであろうか？
　というわけで、元気溌剌オロナミンＣ、萌えな妹のオッパイゲームを作ってます。４月冒頭に音声を収録したゲームですな。
　勿論、鏡がやるからには一球乳魂。すべてのテキストとすべてのＣＧは、オッパイを愉しむためにある。
　もみっとプレイしたい人、ちゅぱちゅぱとプレイしたい人にお薦めなゲームになることでしょう。近々ネットで情報が公開されます。年下のオッパイも、ええもんよ～。

　出版社さんから、昨日の夕方に『ブラバスター⑥』を印刷所にまわしますという連絡を受けて、選挙カーの「最後のご挨拶」ではないけれど、文字通り最後の読み直しをした。
　「やつら」が「やらつ」になっていたのを直したり、山場のシーンの文章を２つ３ついじったり。昨日の朝から昼過ぎまで時間をかけて、終了。近いうちに校正が始まると思います。

　4月20日配本開始の超世代ライトヘビーノベル誌『ファントム』。鏡は、１本コラムを書いています。「オッパイ原論」というタイトルです。110頁＆111頁。
　4月22～23日頃には店頭に並ぶと思いますので、ご覧になってみてください。

　訓示

　会社をパトロン扱いするな。
　適性や才能は、会社が見つけてくれるものと思うな。
　自分が商品力のある存在だと勘違いするな。いかにペーペーで市場価値が低いかを思い知れ。

　会社にまで来て自分探しをするな。
　自分探しは、自分からの逃避だと心得よ。

　本当の自分探しとは、逃げたくなる自分、ダメだと思う自分、自分が認めたくないマイナスイメージの自分ときっちり対面することである。

　昨日の記事の続きだが、なぜ、スポンと抜けなければいけないのか。怒りや怒りの対象（とるに足らぬ人物）を軸にして生きてはいけないのか。それは、怒りや怒りの人物中心の人生になってしまうからである。
　何をしても、それが引っ掛かる。何をしても、取るに足らぬ人物のことが浮かんでロスしてしまう。
　人生は誰のものか。
　言わずと知れた、自分のものである。さらに言うなら、「自分の幸せのため」のものである。それぞれの人生は、自分と自分が大切にする人が幸せになるためのものだ。
　だが、取るに足らぬ人物や怒りを中心にして生きてしまうと、それだけ幸せから遠ざかってしまう。本来自分が目指すことから離れていってしまう。だから、人はスポンと抜けなければいけないし、スポンと抜けてしまった方がいいのだ。

　恨みや悔しさを「一瞬の」バネとするのはいいことだが、それを軸にして生きるのはよろしくない。恨みや悔しさを持ちつづけるのは、生き方として美しくない。そういうのから超然と脱して泰然自若、唯我独尊にたどりつくのが美しい生き方である。
　人は悪しき感情や低次元の憎悪とともに生きるべきではない。誰か特定の一個人への恨みや怒りを携えたまま生きるべきではない。そういうものからスポンと抜けなければいけない。
　スポンと抜けるというのは、視覚的に言うと宇宙から地球を眺めるということである。そこから見た地球はただのひとつの天体。地上のものは点以下、微粒子未満の原子核レベルで、肉眼では決して見えない。
　瑣末な人物やとるに足らぬ人物、怒りや憎悪も同じようなもので、自分がスポンと抜けると遥か眼下に追いやられて見えなくなる。invisibleの存在になる。それを気にしているというのは、自分が抜けきっていないということ、精神的に低空飛行をしているということである。

　現在進行中のエロゲーの音声収録。無事土日の２日間で終了しました。収録直前に1歳年上のバージョンをいただいたのが、今思えばよかった！　それでドンピシャのキャライメージになりました。キャラテストの時には、合わないかなと思っても試すのが大切ですな。
　ともあれ、熱演してくださった声優さん、適格な指示をしていただいたスタジオのみなさん、ありがとうございました。おまけに美味しい鶏の肝とハサミ、親子丼のお店にまで連れていっていただいて、本当に心地よい時間を過ごすことができました。
　いいゲームの予感だね、これは。

　今制作中の──といってもとっくの昔にシナリオはあげているのだけれど──エロゲーの音声収録が、急遽決まりました。
　スタジオに缶詰２日間。
　近いうちに発表になるでしょう。桜はもうじき散ってしまいますが、ゲームの方はこれからが本番。お楽しみに。