講談社でデビューし、講談社の月刊誌で連載していた少女漫画家・末次由紀氏のカット盗作事件については、複雑な気持ちがあって全面批判する気分にも、全面擁護する気分にもなれない。部分批判する気分にも、部分擁護する気分にもなれない。
　ただ、ぼんやりと悲しいのだ。別に彼女の作品を知っていたわけでもないのに、ぼんやりと悲しいのだ。断罪の代わりに、彼女の今の心情を想像してしまう。
　連載時に編集部と彼女の間でどのようなやりとりがあったのか、トレースをしていた時の彼女の状況がどうだったのかなどは不透明の沼に沈んだままだが、それでもあのトレースはやるべきではなかったし、くり返すべきではなかった、下手でもいいから自ら考えたカットで押し切った方がよかった、せめて単行本収録の際に問題のカットには手を入れておくべきだった……とは思うけれど、それを指摘して何の益になるだろう。すでにトレースは行われ、盗作は発覚してしまったのだ。処分は下されたのだ。
　彼女の罪は罪であり、過失は過失である。その過失に対する処分がどうだったのかは、わからない。相手が同じ講談社で活躍している井上雄彦だったのがまずかったとかマイナーで稼ぎの少ない漫画家の絵をパクったのならこうはならなかったとかトカゲの尻尾切りだとか当然の処分だとか全作品の絶版＆回収は厳しすぎるとか、いろんな言説がネットを飛び交っているが、今はその言説の渦の中心を見据える気になれない。それは、圧倒的にマイナーではあるけれど自分も作り手の一人であり、つまり彼女の側に立つ身であり、したがって純粋に他人事のように思えないからかもしれない。あるいは、Wikipediaから記事が削除され、自分の作品が絶版になり、自分という名前が、存在していた者から存在していない者へと抹消されていく──その衝撃を、リアルに想像してしまうからかもしれない。
　今更猛省だの反省だの作り手の風上に置けないだの許せないだのと、突然道徳的に目覚めていかにも自分が聖人君子の衣を纏っているかのように倫理的に振る舞うつもりは、さらさらない。そんなのは、自分にとってはただの偽善であり、偽装であり、逃避だ。作者に対してはただ一言、自分を責めすぎないように願うばかりだ。

この事件が「民衆によるジャッジメント」そのものであるならば、未だ不透明に思われる漫画業界、およびｴﾛｹﾞ業界のリソース共有（俗に言うパクり合い）に対してコメントではなく、出来る限りの実態を公表してみたらいかがですかな？
といいますか、そうでもしないと第二、第三のこういう事件が2chレベルの「祭り」で起こせるようになってしまうようで決して良くないことだと思いますので。
悪良識が蔓延している、と実感しています。
いや、良識を騙った悪か。工業的な意味でなく、もっと精神的な意味でも生産性を感じられない。

漫画から漫画の盗作もありますが、漫画から小説への盗作というのもあることに驚きました。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051108-00000091-mai-soci

↑の通りなんですが、自分には漫画から小説への盗作というのがいまいちわかりません。

参考にするのとどう違うのでしょうか？

絵で状況説明されているのが漫画で、文で状況説明なされるのが小説ならだと思います。

同じを絵を見ても作家によって微妙に変わってくると思うのですが、どうして盗作だと決定ずけられたんでしょうか？

でもまあ、作家本人が認めちゃってますから盗作したのはまちがいないと思いますが、そのことがわかる人たちをすごいなあと関心してしまいました。

彼女のファンで、作品を集め続けていた一人です。
新しい単行本が出ない上、本屋に彼女の作品が1つも無い事に不信感を覚え、ネットで調べ今頃気付きました。
今は驚きと、動揺とそしてただただ悲しみで頭がいっぱいいっぱいです。
話の内容とか結構良かったし、良い作家だったから、残念で仕方ありません。

●shinpさん

＞未だ不透明に思われる漫画業界、およびｴﾛｹﾞ業界のリソース共有（俗に言うパクり合い）に対してコメントではなく、出来る限りの実態を公表してみたらいかがですかな？

そういうのは、精神的な子供がやることです。
勘違いしていらっしゃるようですが、実態を公表しても鎮火にはなりませんし、お祭りの防止にもなりません。逆に匿名掲示板に対してお祭りの材料を与えるだけです。

●名前はまだないさん

物語というのは、映画であれマンガであれ小説であれ、構造的には同じなので、パクリが可能です。表現する形式が違うだけのことです。

●らぼさん

彼女がやったことが罪ではないかと言われれば、罪であるしやってはいけないことだと思います。けれども、マスコミに煽られて、突然倫理的に目覚めて過剰に叩くような醜い「にわか道徳の人」にはなりたくない。

おれがことさら断罪するまでもないだろう、とおれは思ってます。ここで人生終わりになるのではなく、また復活してほしいですね。