彼女がコスプレ活動を封印して約１年になる。
　旧名、柴姫あづさ。現・葦月あづさ。
　巨乳コスプレイヤーとして、翹秀の逸材だった。巨乳アイドルなみの引き締まった身体とすばらしいバスト。そして、愛らしいルックス。まさに巨乳コスプレ世界のユーリア・ノヴァだった。
　彼女のＤＶＤはほとんど所持している。
　動画の中で、彼女は常に緊張した表情をしている。おぼつかない、ぎこちない表情。その姿に、逆に安心した。この子はアイドル慣れしていないんだ、普通の女の子なんだ、と幸せを感じた。
　　過去にメジャーどころからデビューするという噂が流れたことがある。でも、彼女がプロとして活動することはなかった。活動することなく、引退を宣言して彼女は市井の中に消えていった。
　ぼくはあまりアイドルには思い入れしないし、アイドル的な子にも思い入れしない。その子の人間性や性格が透けて見えてしまって、素直に入りきれないのだ。でも、彼女の場合は違う。
　彼女がネット上に最後に残したコメントは、自分はアイドルではないし、アイドルだとも思っていないというものだった。パフォーマンスではなく、恐らく彼女の本心が表れたと思えるその文章を読んで、自分はうれしくなった。ほとんどコスプレしなくなったにもかかわらず声をかけてもらえてうれしかった、覚えてもらえてうれしかったと書いていたが、そう書く彼女の人柄が、凄くうれしかった。ああ、この子はいい子だなと思えた。彼女の人間性に惚れた。
　恐らく多くの巨乳ファンがかとうれいこを忘れられないように、多くのファンが葦月あづさという名前を忘れられないだろう。１０年、２０年と覚えつづけるに違いないとぼくは思っている。ぼくがそう言うのは、もちろん個人的に彼女は凄く好みのタイプだからというのもあるけれど、それは特にルックスやボディがというのではなく、ルックスの向こう側から見えてくる人間性と精神性と女の子性が凄くいいなと思ったからだ。
　彼女ほど、市井のアイドルという言葉がぴったり来る子はいない。あっちの世界の人間でもなく、またこっちの世界の人間でもない。今はこっちの世界の人間だけれど、でも、出会うことのできない人間。市井の中でその美と人間性で輝く、かわいい宝石。非常に稀有な存在だ。
　グラビアアイドルとしてデビューすることが、必ずしも幸せなことではない。普通に女の子として生きて、普通に女の子として幸せをつかむためには、むしろ商業デビューしない方がいいことだってある。まともな子は、あっちの世界には行かない。人間としてのまともさ、女の子としてのいい意味での普通さを持つ女の子は、たとえデビューしたとしてもすぐこっちの世界に舞い戻ってしまう。
　ぼくは会ったことがないが、恐らく１人の女の子としては、いい意味での普通さを持った、凄くいい子だったんじゃないか、と思う。普通に後輩として接していれば、等身大の、頑張り屋さんのいい子だったんじゃないだろうか。恐らく身近にいれば自然に恋していただろうし、離れていてもやっぱりこの子と付き合いたいなと思ったに違いない。告白なんかされたら、こんな幸運が自分に来ていいのだろうかと舞い上がったに違いない。それくらい、女の子としてはいい子だったと思う。ぼくは人間的に彼女が好きだ。
　彼女がコスプレを封印してしまったことは、それを楽しみにする人間としては残念なことかもしれない。ぼくにだってその気持ちはある。できれば、会ってみたかったなという気持ちは強い。でも、名前で生きる世界から匿名の世界に戻ったことは、個人的にはいいことだと思っている。少なくとも、彼女にとっては幸せなことだったはずだ。
　本当にまともさを持った子だからこそ、いい普通さを持った子だからこそ、彼女には女の子として幸せを、人間としての幸せをつかんでほしいな、と願わずにはいられない。

引退直前に存在を知った身としては、もうちょっと活動して欲しかったです

⇒モーゼルさん

> 引退直前に存在を知った身としては、もうちょっと活動して欲しかったです

　うん、そうね。
　もっと見たかったなあって気持ち、あるよね。

　学生を終えて就職を機会に身を引くというのは潔いと思うし、女の子としても人としてもステキだなと思います。