処女信仰が復活してきているという記事が、週刊ＳＰＡ！で特集されている。

⇒処女ブーム復活の謎

　色々と分析がなされているが、『TVチャンピオン』アキバ王選手権優勝者・寺尾幸紘の分析がいかにも浅学非才で底が浅い。

「基本的に、オタクはみんな処女が好きです。オタクはコントローラブルなものが好きで、自分でスイッチを入れて、変えるのが楽しいんですよ。何より、処女にはプレミア感があります。オタクは"初回限定"という響きが大好き。言ってみれば、処女は究極の初回限定みたいなものですから(笑)」

　ただ表面的行動を結びつけて書いてあるだけの、とても分析とは言えない分析。井戸端会議やってんじゃないっつうの。
　彼の説明からは、自分でコントロールできるものばかり遊んでニタニタしている――そういういやらしい姿が見えてくる。それって、フィギュア愛好者を性犯罪者予備軍扱いするのと同じくらい、間抜けな態度だっつうの。
　秋葉系で名を成したくせに、秋葉系の人たちをただのキモ扱いするとは、許せんね。オタクが行動的・外見的にキモく見えることがあるとしても、内面までそうじゃないっつうの。
　コントローラブルなものが好き。それはいい。でも、なぜそうなのか。その奥のメンタリティまで踏み込まなきゃ、分析にならない。分析としてキモいのはそっちだ。
　第一、オタクがコントローラブルなものが好きだから処女を好きだとして、じゃあ、そうでない一般人もなぜ……という説明にはなっていない。説明として間抜けすぎ。その時点で、底が浅いのも理屈として穴だらけなのもわかる。
　『非実在青少年論』でも書いたことだけど、男性性が低下すれば、性的な経験者は女性性が上の相手として映ります。そりゃ、男性性の低い男性からすりゃ厳しいっつうの。処女の女性の方が好まれます。当たり前の理屈です。
　一時期処女がださいと言われたのは、恋愛市場が自由化して、その中にセックスが取り込まれたから。しかも、その時は肉食系＝「ぶいぶい言わせる男性性」が肯定されていた。それで、女性も、古い価値観を捨てて、新しい恋愛市場の要請に応えようとした。そして、処女を捨てようとした。
　でも、今は違う。
　男性性の確立が非常に難しくなっている。そして、男性の男性性が低下している。それで処女が求められるようになっているのです。
　ちなみに大昔、処女が重宝されたのは、資本主義との関係です。
　資本主義は、家族に限定された性関係をのみ肯定しようとします。つまり、正式に結婚してちゃんと赤ちゃんをつくって人員的に国家に寄与して、納税部分でも国家に寄与する性的関係を認めるってことね。
　女性に性体験があると、それを崩すとみなされたのです。それで、処女が肯定された。と同時に、当時の男性性は、強烈な家父長制で保護されていました。性的な部分での男性性の中身は、全然強くなかったんだと思うけど、それが家父長制でガードされていたのです。
　でも、今は家父長制が崩壊。
　だいたい世の中のオヤジは、娘にすり寄っているっていうしね。頑固オヤジ、怖いオヤジが消えて「昨日はおれ、怒りすぎてごめんな」なんて娘の好物を持っていったり。
　そういう中では、性的な部分での男性性、弱い男性性を性的にガードするものはありません。おまけに男性性の確立は難しいときている。そういう中では、未熟な性的男性性に対応して、未熟な性的女性性――すなわち処女が求められるのです。